第31話 何をそんなにむきになるのか

 正法眼蔵随聞記二の七の(二)

 「ただ人をも言ひ折らず、我が僻事にもひおほせず、無為にして止めるが好きなり。耳に聴き入れぬやうにて忘るれば、人も忘れて怒らざるなり。第一の用心なり。」

 ただ人を言い負かさず、自分の誤りにしてしまうこともなく、どうということもなく放っておくのがよい。耳に聞き入れないようにして忘れてしまえば、人も忘れてしまって起こることもないのだ。第一の心得である。

 今の世の中、やたらとむきになって論争している。論争というよりは悪口の言い合いに近いと感じるが。ディベートだか何だか知らないけれど、なにをそんなにむきになるのかわからん。べつにどうでもいいじゃないかということを声高に言いつのっている。そんなことに白黒つけたってしょうがないじゃないかと思うようなことに必死になっている。

 そのほとんどが、すべてと言っていいかもしれないけれど、聞かないことにして忘れてしまえば、みんなも忘れてしまうようなことばかりじゃなかろうか。

 ぎゃあぎゃあ騒ぐ前によくよく考えてはいかがだろうか。

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