正法眼蔵随聞記 いやはや今の世の中は

第21話 無常とは

　正法眼蔵随聞記二の二その一

　「貪欲（とんよく）無からんと思はば先づすべからく吾我を離るべきなり。吾我を離るるには、観無常是れ第一の用心なり」。

　貪る欲望を無くそうとおもうならば、まずやらねばならないのは「自分が自分が」という自分（吾我）を離れなければいけない。吾我を離れるには、この現実世界は瞬間瞬間変化しているのだということを知ることがまず一番に心しておかなければいけないことだ。

　自分に執着することが真実・真理を見失う原因だ。それを捨てなければいけない。

　今の世の中、自分に執着している人間で溢れている。見苦しいねえ。

　無常を知るというと、この世は儚いみたいな情緒的なことのように感じる人が多いかもしれないけれど、そうではない。

　現実世界は同じ状態が続くことは絶対にない。瞬間瞬間変化している。心臓が常に血液を循環させているように、滞ることは絶対にないのだ。客観的な事実だ。

　この常に変化しているという事実の中で、「自分」というものは固定して存在しているように考えてそれにしがみつくのは滑稽であり、悲惨だ。

　常に変化する瞬間瞬間に対応して生きていく。そのためには坐禅して身心を真実・真理と一体としておかなければならない。「自分」に拘っている暇などないのだ。