第13話 「自分は、自分が」で真実を見失う

 正法眼蔵随聞記一の九 その一

 「多分法を聞くとき、先づ領解りょうげする由を知られんと思うて、答のことばの好からんやうを思ふほどに、聞くことは耳を過ごすなり。せんずるところ道心なく、吾我を存するゆえなり」。

 多くの人は法(真実・真理)を聞くとき、真っ先に自分はよく理解できたということを知られたいと思って、かっこいい答を言おうと思えば思うほど、法の言葉は耳を通り過ぎて行ってしまうのである。結局のところ、真実・真理を知ろうという心が無く、「自分は、自分が」という思いが強くあるからである。

 今の世の中、わかったような、気が利いたような言葉に溢れてますなあ。しかし、真実・真理、本質を突いていると思う言葉に出会うことは、まずない。

 この世の中で起こっている様々な事象、言動について、「自分はわかってるもんね!」という浅はかな感覚を得意になって吐き散らかしている。だから真実・真理、本質からどんどん遠ざかり見失う。

 自分は凄いんだよなんて自分で言わない方がよろしい。みっともない。

 「自分」に憑りつかれて正気を失っている人間のなんと多いことか。「吾我を存するゆえなり」よくよく胸に刻みましょう。

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