第5話 何をそんなに欲張るのか

 正法眼蔵随聞記一の三 その一

 道元禅師が教えて言われた。「学道の人、衣食を貪ることなかれ。人々にんにん皆食分じきぶんあり、命分あり。非分の食命じきみょうを求むともきたるべからず」。

 仏道を学ぼうという人は着るものとか食物を貪ってはいけない。人にはみなそれぞれに生きている間に食べられるものが備わっており、命も生きる間は生きられるだけのものが備わっている。それを越えて欲しがってもそれが来ることはない。

 今の世の中「衣食を貪る」人ばかりに見える。ブランド物を身につけたい、グルメだとかなんとか言って旨いものを食いたがる人間に溢れている。

 何のためにそんなに身につけるものが欲しいのか、何のために食いたがるのか。

 結局のところ、何のために生きているのかという根本のところがわからなくなってしまっているのだ。根本を見失っているから、無暗に高級と言われているものが欲しい、希少なものが食いたいという欲望に憑りつかれている。

 こういうのを餓鬼という。これを餓鬼と言わずしてなんというのか。

 欲望を露わにすることが推奨されている世の中だ。

 欲望は必要だ。欲望が無きゃ生存できない。けれど生きるのに必要な分を越えてまで欲しがる必要はない。食分、命分を越えて欲しがる必要はない。

 生きてどうするのか。食うために生きるのじゃなかろう。着るために生きるのじゃなかろう。その根本をとらまえずに欲望に囚われて餓鬼となってしまってはいけない。

 何をそんなになぜ欲しがるのか。改めて自らに問うてみることを薦めます。

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