18.☆「秘術の名は死霊非法」
「──おや? 自ら組織を去ったくせに、"アサシン"には愛着でもあるのかな?」
「……
*
怒りを込めて、アサシンを知るガウストが「アサシンとは何か」を語る。
彼女が
「
「……末端だろうが、このような
「へー、そうかい。アンタらは
「していたさ。……当たり前だろう?
「──心、だってさ」
"血"のアンテドゥーロは同調を求めるように、ゴートを見て声をかける。
反応に困る、ゴート。
「……人殺しなんて人でなしの心ない連中にしか出来ない所業でしょ? それなのに言うに事欠いて心とか、今まで殺してきた奴らの
「暗殺と殺人には違いがある。
「違いも何も、やってる事は同じだろ!? ……
「──殺人には衝動的なものも含まれるが暗殺は能動的でそれがない。殺すつもりはなかったという殺人もあるが、暗殺にそのような言い逃れはない。仕掛けて、殺す。それは
「そんなの言葉遊びだ、一緒だ、一緒! ああああもう! 苛々するなぁ!」
一方、ガウストは小さく嘆息を
「ジュリアス」
「……うん?」
「あれを、ぶちのめしてもいいだろうか?」
「は……!?」
唐突に予想外の相談をされ、つい間の抜けた返事をする。
「あれに苛々しているのは私とて同じだ。我々は暴力を否定しないし、使用する事も
「お前、何言って──」
「分かった。自重しよう」
「別にしなくていいよ。──
それこそ、"血"のアンテドゥーロは行動は衝動的だった。
服の
それを迷いなく、ガウストに向かって
短剣は
「順序が滅茶苦茶だ。"
(へぇ……なるほどねぇ……)
ジュリアスは声にこそ出さないが、ガウストに感謝する。
別に彼自身は狙われたとしても後手で対処できるが、素人二人はそうはいくまい。彼女は自然な流れで、こちらに注意を促してくれたのだ。
「私を人でなしと言ったが、貴様は考えなしだな。このような密室で襲い掛かって、その後はどうするつもりだ?」
「それを考えるのも指示するのも僕の役目じゃないからね。僕は
「
「
"血"のアンテドゥーロは手元を隠すように両手を腰に回し、右手で短剣を投擲!
またしても狙いはガウストの顔面──今度の彼女は壁を蹴って加速し、短剣を避けつつ、三人のいる円卓に向かって跳んでくる!
「あっ!」
「うわっ!」
巻き添えに──
ジュリアスもだ、二人ほど切迫してる訳ではないが、ガウストには何らかの意図があって寄ってきているのだろう。彼は"血"のアンテドゥーロの方を
ガウストは三人が離れた円卓にたどり着くと
──間一髪、間に合った円卓の盾に短剣が突き刺さる!
(ああ……あれが多分、"
……安物の調度品ではない、そこそこの厚みと堅さを持つ円卓に弾かれるでもなく短剣は突き刺さったのだ。かなりの魔力が込められていたに違いない。
(軌道の操作──
補助魔法という大枠にある系統の一つに、付与魔法がある。有体に言えば、様々な魔力の働きを道具に宿らせる魔法だ。昨今の魔術師、魔法使いたちには特に珍しくも難しくもない魔法である……高等な奥義を除けば、であるが。
(しかし──)
"血"のアンテドゥーロのやり口を見て思った、そしてそれは、この場にいる四人が
全員抱いた疑念だろう。
この国で起きた殺人事件では凶器に刃物が使われていた、つまり──
「なぁ、"血"のアンテドゥーロさんよ。まさかと思うが、お前が一連の事件の真犯人だったりはしないよな?」
ジュリアスのわざとらしい問いを少女は当然、
「……馬鹿じゃない? その短絡的な発想。僕が短剣を持ち出したからって、そんな筈がある訳ないじゃない。証拠を見せてあげるよ!」
彼女の左手にはまたしても、いつ取り出したのか短剣が握られていた。
それは円卓や壁に突き刺さった短剣とまるで同じような物に見えた、
(と、いうより……)
壁に突き刺さっていた筈の短剣が消えている。どさくさ紛れに回収したのだろう。
短剣の軌道を変化させる魔術が使えるなら、手元に引き寄せるのも造作ない。
もっとも、人の目を
ともあれ、随分と抜け目のない──
「うん、証拠……?」
彼女の発言内容が引っ掛かったのと、行動を起こしたのは同時だった。
"血"のアンテドゥーロは手にした短剣を誰かにではなく、誰もいない床を目掛けて投げ付けたのだ!
短剣の刃は
「戻れ、
唐突に、短剣が
(酸!? いや、違う……なんだありゃ?)
絨毯と墨のような液体が反応して白煙を上げた事からジュリアスは酸と誤認したが、どうも様子が違う。
もしも、近くに寄れていたなら白煙から磯の香りがしただろう。
「ルコリネ・クマネ・ナオワホノ・ハクネ・マネネハ・キヒモンノット! ──我が
呼び声に応えて出でよ!」
「なんだそりゃ!?」
ジュリアスは思わず叫んだ。
意味不明な言葉の
それなのに、呪術は発動している。
この時のジュリアスは知る
「こいつは一体……!?」
「こいつは一体、だって!? いいね、その反応! 言ったろ、これが
密室の筈の室内に風が吹き荒れ、空気が張り裂ける音がする。稲光を
顔は
目は黄色に光り、歯を剥き出しにして甲高い声でこちらに
──その時、思いがけない方向から誰かの声がする。
「……やれやれ、こいつはなんだい?」
呪術によって封印されていた扉が開け放たれ、
その脇をすり抜けるように、数人の騎士や兵士が勇ましく部屋に踏み込んでくる。
騎士達の突入を待ってから、老女もゆっくりと部屋に入る。
彼女は魔術師の正装だ、王城にいる魔術師といえば相場は決まっている。
「一体、何の騒ぎだい? 説明が欲しいね、"血"のアンテドゥーロ」
冷静な物言いにも目に見えない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます