第69話 069 呪い
「ガナフがやられたようですよ」
「…知らん」
やや遅れて黒い
「ほら、貴方を嫌っていた。骨人形にも反対していた彼です。まあ彼が反対したのは、発案が私だったからでもあるとは思いますが」
「…どうでもいい」
狼人はそのガナフと呼ばれた魔神も、飄々とした目の前の男にも、心底興味が無い。
「そうですか。しかし貴方を撃退した者達には興味あるでしょう。ガナフをやったのは彼らです。しかも…あの魔女がまたも力を貸し、今後は仲間として正式に参加するようです。実に面白くなってきました」
確かに傾聴せざるを得ぬ話ではあったが、無駄に早口で捲し立てる男に黒い狼人は苛つきを隠さない。
「確かに英雄の力は侮れません。しかし
「…無駄に慣れ合う気はねえ。話が終わったら失せろ」
狼人は曲刀を持つ手に力を籠める。
「困りましたね。…まあ私も、己が好まれ難い
「…逆らう気はねえ、余計な口叩くな」
事実、その狼人は迷宮の主にそこはかの好意を抱いていた。
人でありながら、人を辞めた男。
人でありながら、魔王となった男。
「これまでは気紛れの児戯でも、今後は我らを脅かす事態もあるやもしれません。主様の意思に逆らい、己が身を焦がしてでも…主様を守らねばなりません。どうか、其の事だけは忘れぬよう。貴方は主様のお気に入り。私もその成長に期待して…」
曲刀が鋭く空を斬る。
既に、男は居ない。
「はい、安心しました。それでは…御機嫌よう…」
男の気配が絶える。
狼人の苛つきは収まらない。
先の飄然とした男は己の力を遥かに凌ぐ。
力こそが全てであり、この世の唯一の理。
それがこの黒い狼人、首狩りルガールが生涯で学んだ真理である。
人の、その真理に漏れぬ社会を構築しながら愛だの正義だのと糊塗する欺瞞に、その身が逆立つ。
忘れ得ぬ過去、その激情。
そして黒色の狼人は再び、力を求めほの昏い迷宮を歩み始める。
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