第63話 063 嫉妬
最初に魔力の拘束を抜けたのはガイだった。
奴が結界の小塔の一つを蹴り飛ばす寸前、突きでその足を狙うが、カルの姿をした悪魔は空へ跳ね上がり難なく躱す。続けざまに放たれる突剣の連撃を手でもって空中で捌き、着地と同時の回し蹴りでガイは硝子窓を砕いて堂の外へと吹き飛ばされた。
「よく頑張ったね。ご褒美にこの小塔を破壊するのはやめてあげよう。あと3つだね!」
小塔は全部で4つ。前衛は俺とギルとガイの3人。
「きさ…ま…」
「なんだよその顔。何か文句あるの?」
結局俺達は奴の掌で踊らされてるに過ぎない。力無き俺達は奴の定めるルールで動く事を余儀なくされている。
それでも、時間が稼げれば。たとえ俺達が命を失うとしても…ミリアさえ来てくれれば。
「さ、次はこっち。早くしないと倒れちゃうよ?」
悪魔が次の小塔をその足で揺らす。
「やめろ!」
瞬間ギルが跳ね上がり、その長剣を手に斬りかかる。三度、大振りながらも鋭い斬りを悪魔は躱す。
「凄い凄い、大したもんだ!もう君達も一端の冒険者だね!」
一度拘束を抜ければ自由に動けるのか、その剣技は常態と変わらずに
「うーん…残念でした」
フェイントからの渾身の突きは奴の鼻先を掠め、がら空きになった胴を蹴り上げられたギルは天井まで跳ね上げられ、激突し、冷たい床に落下した。
「ギ…ルッ…!」
ギルの元へ高僧と一人の蘇生術師がにじり寄り、回復を試みる姿をニヤけながら悪魔が語る。
「素晴らしい。君達の成長…感慨深いものがあるよ。あの犬ッコロを撃退したと聞いた時は耳を疑ったよ。あの骨のオブジェは
「ル…ルガール…」
『主様は骨より余程あのイヌを気に入られたようだ。私は黙って服従するような者では無いと反対したが…オブジェを失っても、なお笑っておられた。もはや何も言えぬ、忌々しいイヌよ』
やはりあの巨骨に憑依したのはルガールだったのだ。そして、ルガールはザラタンの配下となった。
『さて。私が見るにあのイヌはどうやら黒髪の君に執着してるようだ。由縁は知らぬが…ヤツの楽しみを奪うのも一興』
「…さ!お話はおしまい!」
そして悪魔はゆるりと三つ目の小塔へと踏み出す。
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