第38話 038 黒色のルガール3
奴が曲刀を
おそらく首を
階段で戦っていたのだから、きっと階段上まで飛ばされてしまったのだろう。
いずれ血流による脳への酸素の供給が完全に途絶え、意識を失う。
ギル一人で奴を防ぎきれるだろうか。リナは。カルは。レノスは。ガイは…。
しかし、予想に反して俺の意識は一向に途絶えなかった。
俺は体を起こす。
俺の首には、まだ体が付いていた。
俺はまだ、生きている。
「ミリア…」
視線の先にはカルディアの魔女の後ろ姿。
ミリアが居た。
更に先には怒りの表情の曲刀使いの
「なんだァ貴様はァ!!」
「
「酒場で大層暴れてくれたそうじゃのう」
ミリアの言葉で皆が状況を察す。ルガールと呼ばれたこいつは獣人・亜人も見境い無いのだ。
「ザック!魔術師を前に立たす気かえ?」
俺は跳ね起き、ミリアの前に走り出る。しかし妙だ。ルガールは襲ってこない。よく見ると奴の左腕は肘から先が無かった。
何があったかわからないが、ミリアがやったのだろう。奴は予想外の手酷いダメージを受け、様子を
「ほれどうしたワン公、はよかかって来ぬか」
ミリアが挑発するがルガールは動かない。
「なんじゃ怖気づいたのかえ?」
「大層な
ルガールは動かない。
「いっそクソ
「いや、
「やあぃ!ざぁこ♡ざああぁこ♡♡♡」
ルガールのその憤怒の表情は頂点に達した。赤い眼は更に血走り、
しかしその激情とは裏腹に、次の瞬間奴の体は階段へと跳ね、その闇の先へと消えていった。
奴はミリアを前に、逃げだしたのだ。
「ふむ、冷静じゃの」
皆が
しかし俺はそのルガールの行動に脅威を感じていた。
奴は、この迷宮で生き残り…更に強くなるのだ。
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その後、俺達は無事エントランスまで辿り着き地上に帰還した。
ミリアはそのまま地下2階へと降りようとするので心配したが、「3階までなら1人でも全く問題無い。奴を放っておくはワシの
後からリナに聞いたが彼女は徒手空拳もそれなりの力があるらしい。
考えれば、不老の魔の者ならばそれも当然だろう。実際俺を救ったのは魔法ではなく、その手で直に引き戻したそうだ。
ルガールはミリアの挑発に乗らず逃走を選んだ。ミリアは"招かれざる者"として迷宮内で力を抑えられても、それでも1対1で奴より強いのだ。それならば俺に檄を飛ばし前に出す必要は無かったのではないか?と後にミリアに尋ねると、彼女は「お前に守って欲しかったのじゃ」と言ってウインクをした。
ガイの傷は想像以上に深かったが、レノスが付き添ってくれて数日で回復した。
全滅の危機ではあったが皆精神面でも問題無さそうで、俺達は1週間後には探索を再開した。
「ジャックは、死んでしまった」
ライナスの酒場で俺はエルフの剣士テミスにそう告げられた。
"
「奴はマスターに撃退され迷宮に逃げ込んだんだ」
酒場のマスターは
彼女とジャックがどの程度の関係かはわからないが、ジャックを語る彼女のその表情は寂しく、哀しい顔をしていた。
「彼は君を語る時、嬉しそうだったよ」
知性を持ち人語を解せる以上、人と獣人でも交友が生まれる事もあるのは当然だ。
異形の狼人ルガールはそれを憎むという。
ミリアによると奴は地下4階以降に降りたため、ひとまずの追撃は断念したらしい。
「奴は迷宮深く潜ったそうだ」
俺がテミスにそう伝えると、
「出来る事ならば、私のこの手で討ち取りたいと思う」
哀しげな表情で言う彼女の眼には、しかし、
ジャックは不本意ながら酒場の先の、道の脇に弔ったそうだ。いつかルガールの首を取り墓前に供え、ジャックの故郷を訪ねたいという。
テミスには地下2階を抜け山の酒場まで1人で行ける実力がある。俺がジャックを弔うには…まずそれが出来る力をつけねばならない。
俺はジャックの仇討ちを、声に出して言えるテミスの強さを酷く羨ましく感じた。
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ここでひとまずの毎日更新は停止します。
未完というわけではなく、既に3話ほど書いてますがもう少し書き溜めて更新を再開しようと思います。忙しければ週一更新程度になるかもしれません。
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