第18話 本戦 準決勝

 タイガも準決勝に進んだそうなのだが、次のやつがヤバい奴らしい。

 かなり気合いを入れていたが、大丈夫だろうか?


『続いてはぁぁぁ、ついにぃぃ準決勝だぁぁぁ!』


「「「わぁぁぁぁ!」」」


『それでは登場して頂きましょう! この人の突進は誰にも止められないぃぃぃ! バッファローの獣人のぉぉぉ! バソン選手ぅぅぅぅ!』


「ブォオォォォオ!」


 入口から少しでたところで雄叫びをあげている。

 パフォーマンスとしていい感じに盛り上がっている。

 歓声が凄いな。


 俺も真似するかな。


『続いてはぁぁぁ、怒涛の攻めを止められるものはいるのかぁぁぁ! 流星の如く現れたぁぁぁ! チーターの獣人のぉぉぉ、ライクゥゥゥ選手ぅぅぅぅ!』


「うおおぉぉぉぉぉぉぉ!」


「「「おおぉぉぉぉ!」」」


 はっはぁー!

 どうだ! 俺の雄叫びは!

 バソンを見るとニヤリと笑っている。


 俺と同じ、戦うことが楽しくて仕方がないといった感じだろう。

 ステージ中央で向き合う。


『それでは、準決勝、始め!』


「ブオォォォ!」


 いきなり頭の角を利用した突進できた。

 両手でガッチリ掴んで踏ん張る。

 ズズズズッと押される。


 たしかに凄いパワーだ。

 でも、正面から受けなければいい。

 少し身体を流す。


 角を下にくるっと回して投げる。

 ズダンッと背中から落ちたバソン。

 投げられたのは初めてだったのか、受身が取れていない。


「おぉ。イテェイテェ。なんだよ。力比べじゃねぇのかぁ?」


「はははっ。それだけじゃ面白くないだろ?」


「はっ! ちげぇねぇ!」


 また突進してきた。

 またかよ。

 そう思ってまた角を取────。


 身体がズレた。


「おっふ!」


 咄嗟に仰け反って迫り来る腕を避けた。

 コイツ。突進だと思わせてラリアット放ってきやがった。


「ほぉ。よく反応したな」


「こちとら瞬発力で生きてんだよ!」


 反撃とばかりに上段蹴りを放つ。

 なんなく腕でガードされて弾かれる。


 バッと離れたかと思ったら端まで寄っている。

 あいつ、またヤル気だ。

 今度は四足で来るらしい。


 俺も端により、クラウチングスタートの構えをとる。

 後ろ足でザッザッと地面を蹴りながらタイミングを見計らう。


 バソンも気を溢れさせ、迫ってきた。


 行くぞ!


 地面を蹴り飛ばし、四足で走り出す。

 トップスピードでは勝てねぇだろ?

 こちとら獣人界最速だ。


 いかにその角で突進してくるバッファローが死神と呼ばれていようとこのスピードの元には適わねぇよ?


「ブモオオォォォォ」


「幻獣流 幻星げんせい


 両者の突進がぶつかる。


ズドォォォンッッッ


 凄まじい重厚感のある音をさせて激突し。

 赤い闘気がぶつかったとこによる衝撃波が発生する。

 客席までビリビリと波を波及させる。


『こぉぉぉぉれはぁぁぁぁぁ! 両者無事かァァァァァ!?』


 突進したままの状態で止まっている二人。


 かてぇぇぇ!

 頭硬すぎんだろ!

 俺の膝がいてぇぇわ!


 バソンの目は死んではいない。

 こちらを睨みつけるとそのまま腕をぶん回してきた。


 めんどくせぇ。

 ガシッと腕を組む。

 力勝負のってやるよぉ。


 闘気を爆発させ身体に纏わせる。

 ガッシリ相手のもう片方の手をとり頭を相手の肩に入れる。

 そして腰を落とし、持ち上げる。


「おぉぉぉぉらぁぁぁぁぁ!」


 バソンの身体が持ち上がり、逆さになる。


『うおぉぉぉぉぉ! なんとぉぉぉ、ライク選手、バソン選手を持ち上げたぁぁぁぁぁ! 何が起こるんだァァァァ!?』

 

 ここなら放たれるのは、そう。

 現代ではプロレスでお馴染みの。


 ブレーンバスターである。


 そのまま俺は後ろに倒れ込み。

 バソンを投げた。


ズダァァァァァァンンッッッッ


 バソンは苦悶の表情を浮かべて動かない。


「ガハッ!」


 また受身が取れなかったのだろう。

 背中を強打したようだ。

 そのまま大の字になって動かなくなった。


「もう無理だ。動けねぇ」


 レフェリーが手を交差する。


『ああぁぁぁぁぁっとぉぉぉ! 勝負あり! 力比べを制したのはぁぁぁぁ、ライク選手ぅぅぅ!』


「「「おおぉぉぉぉ!」」」


 観客の盛り上がりは最高潮だった。

 次の準決勝までは。


 次の準決勝。

 タイガの相手はハイエナの獣人。

 それはいい。


 相手は武器を持っていた。

 別にこの武闘大会、武器は禁止されていない。

 ただ、己の力を示す大会のため、誰も使ったことは無かったそうだ。


 最初タイガは武器を持っていてもノリノリだった。

 負けねぇと。

 武器如き。


 だが、相手は防具も付けていたのだ。

 鱗のような硬いものを。

 それも反則ではない。


 しかし、タイガにその防御を破るほどの術がなかった。

 そう、実力不足だった。

 それは仕方がない。


 だが、できる限り抗ったのだ。

 なんとか倒そうと。

 防具がない首筋にいい一撃を入れたのもあった。


 代わりに腹を切り裂かれた。

 相手は殴られても構わないというふうに。

 切り裂けば勝てるのだからといわんばかりに。


 それを続けていくうちに傷が増えていくタイガ。

 タイガの怪我が真っ赤に染まり。

 ついには倒れた。


 そしてあろう事かそのハイエナは。

 高らかに笑っていた。

 タイガの勇姿を馬鹿にするように。


 この大会に出ているものを嘲笑うかのように高らかに笑っていたのだった。

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