第17話 本戦 二回戦

『それではぁぁぁ、皆さんお待ちかねぇぇ、二回戦を開始致します! ABブロックの勝者とGHブロックの勝者は準決勝に進むことになり、今から始まる二回戦の勝者と対決です!』


「「「わぁぁぁぁ!」」」


 さっき控え室であったが、タイガはなんなく勝てたらしい。

 決勝で会えるのが一番いいが、そう簡単にはいかないだろう。


『それでは、二回戦です! 象の獣人のぉぉぉぉパオン選手のにゅぅぅぅじょぉぉです!』


「「「わぁぁぁぁぁ!」」」


 手を振りながらドスンドスンと歩いてくる。

 これはかなりの巨体だ。

 強そうだな。


 思わず笑みを浮かべる。

 それ見たパオンは怪訝な顔で見てくる。


 不気味だろうな。

 自分の大きな身体を見て微笑むなんて。

 変なやつだと思ってくれていいぞ?


 俺は楽しみなんだ。

 強いヤツと戦えるのが。


『続いてぇぇぇぇ、今大会の注目株ぅぅぅ、チーターの獣人のぉぉぉぉライクゥゥゥゥせんしゅうぅぅぅぅぅ!』


「「「おぉぉおぉ」」」


 地鳴りのような歓声が響いた。

 はははっ。

 凄いな。みんな楽しみにしてくれているんだな。


 手を挙げて歓声に答えながら真ん中に歩いていく。

 向かい合ってお互い構える。


「すり潰してくれるわ」


 パオンが挑発してくる。


「お手柔らかに」


 俺は挑発にはのらないが、返事は返す。

 すると、その返事が気に入らなかったようで。

 フシュゥゥゥと鼻から息を噴き出した。


 おっと。

 怒っちゃったかな?


『始め!』


「フンヌ!」


 パオンは鼻を振り回して一撃を放ってきた。

 咄嗟にバックステップで避けるが、凄まじい風圧が襲う。

 これを喰らったらひとたまりもない。


「避けるかでもこれならどうだ? スゥゥゥゥ」


 鼻で物凄い勢いで空気を吸い込んでいく。

 鼻に向かって引きづられていく。


 徐々にズルズルと。


『パオン選手、一撃目を放ったと思ったら出ましたぁぁぁ! お得意の吸引だぁぁぁ!』


 これ得意技かよ。


 引っ張られるなら逆に飛び込んでやるか。

 闘気を身体から溢れさせ、クラウチングスタートの構えをとる。


 さぁ、行くぞ?


 ドンッという音と共に弾けるようにパオンに迫る。

 もう目の前だ。

 近づいていた力のベクトルの方向を地面を蹴って変える。


「幻獣流 幻双」


ドパァァァァンッ


 腹部に俺の両手で放った掌底が突き刺さる。

 内部から破壊するこの技には抗えないだろう。


「ぐぬうぅ」


 腹を抑えて少し後ずさる。


『あぁぁぁっとぉぉ、ライク選手の得意技ァァァ! 両手で放った掌底がパオン選手を後退させるぅぅぅぅ! 大丈夫かぁぁぁ? パオン選手ぅぅぅぅ!?』


 だが、その隙を見逃しはしない。

 今はガードが下がっている状態だ。


 跳躍して頭を狙う。


「幻獣流 下幻かげん


 上からの打ち下ろしの蹴りを放つ。

 ズドンッと思い音が響き渡る。


『こぉれはぁぁ、ライク選手の凄まじぃぃぃ蹴りが突き刺さります! がぁぁ、パオン選手、鼻で防いでいるうぅぅ!』


 そう。鼻を間に入れ込んで塞がれたのだった。

 そして、その鼻で反撃してきた。

 攻撃してまだ空中にいる状態だった所に鼻の一撃を放ってきた。


 なんとか両手で防ぐが。


ズバンッ


 腕がビリビリとダメージを受けたことを訴えてくる。

 吹き飛ばされてしまい、ステージの端まで来てしまった。


 仕切り直しか。

 まぁ、攻めないという選択はない。


 腹は弱そうだったからな。

 懐に入ろうか。

 再び肉薄する。


 跳躍してパパッと拳打を放ち、鼻で応戦に来たところを逆に鼻を蹴って懐に入り込んだ。


 下をとった。


「幻獣流 上幻」


 完全に上がっている顎に向けて、ムーンサルトキックを放った。

 バギッと鈍い音をさせて顎に突き刺さる蹴り。


 フラッとするパオン。

 もういっちょ。


「幻獣流 幻双げんそう


 腹に向けてもう一撃。

 先程と同じ箇所に内部から破壊する掌底をもう一度放つ。


「ぐぅぅぅ!」


『こぉぉぉれはぁぁぁ、凄まじぃぃ連撃ぃぃぃ! パオン選手、思わずよろめいてしまうぅぅぅ! それに更に追撃を加えようとしているライク選手ぅぅぅ!』


 なんとか踏みとどまっているみたいだが、もう一押しかな?

 クラウチングスタートの構えをとる。


 さぁ、これには耐えれるかな?


 スタートした勢いは一歩事にスピードを増し。

 赤い流星の如く迫っていく。


「幻獣流 幻星げんせい


 流星の如くスピードで迫った俺の飛び膝蹴りが突き刺さる。


「がぁぁぁぁぁぁ」


 流石に吹き飛ばされるパオン。

 かなりの重量があるが、俺の蹴りの威力の方が勝ったようだ。


『あぁぁぁぁっとぉぉぉ! 凄まじぃぃぃぃ! 赤い流星の如くうぅぅぅぅ! 突き刺さった膝蹴りにパオン選手がふきとばされたぁぁぁぁぁ! これは耐えれないかァァァ!?』


 端っこでなんとか踏みとどまったようだ。

 ふむ。耐えたか。

 もう一発行くかな?


 構えを取ろうとするが、パオンの様子がおかしい。全くと言っていいほど動かないのだ。


 これはもしかしてと思い、近づいてみる。

 はははっ。なんて気合が入った奴だろう。

 レフェリーに手を交差して見せる。


 ステージ横で見ていたレフェリーが駆けつけてパオンをチェックする。


『えー。パオン選手は気絶しておりますため、戦闘不能とみなします。よって、勝者、ライク選手!』


「「「おぉぉおぉぉ!」」」


 手を挙げて歓声に答える。


『なぁんとぉぉぉ、立ったまま気絶するというなんという闘志でしょうかぁぁぁ! パオン選手素晴らしい戦いでしたぁぁぁ! そして、ライク選手! 攻撃の威力が凄まじぃぃ! これは優勝候補ではないでしょうかぁぁぁ?』


 なんとか勝てた。

 次は誰だ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る