第15話 予選Fブロック

 俺は今壇上にいるが、全く意識が違う所にいっている。どこにいっているか。それは、流派の名前を考えることに思考を使っているんだ。


 んー。猫科だからって猫入れたら弱そうな名前になるしなぁ。どうしよぉ。


『それでは、Fブロックの予選、開始!』


「オラァァァ!」


 横から犬の獣人が殴りかかってくる。


 んー。速さを活かすから、瞬雷とか……。


 横のヤツをヒョイと避けて、闘気を脚に纏わせて蹴り飛ばす。


「ぐぁぁぁぁ!」「なっ!? ぐぁぁ!」

「なぁぁぁ!」「くるなよぉぉぉぉ」


 四人ぐらい固まって場外に落ちていった。

 だが、ステージには四十人くらいいる為、まだまだ人はいる。


『おぉっと!? これはいきなりチーターの選手が一気に四人を場外に落としていったぁぁぁ! 凄い! 何者だァァァ!?』


 驚異と感じられたのか、周りのヤツらが皆一斉に押し寄せた。


 んー。獣は入れたいよなぁ。獣拳みたいな?


 下にしゃがんで下段蹴りをクルリと一回転する。すると、周りにいた奴らは宙に浮いた。


 それを一回転しながら的確に一人一人を蹴り飛ばしていく。周りの人達は警戒していた為に、巻き込まれることは無かった。


「くっそぉぉぉ!」「あぁぁぁ」「ぬぉぉぉ」

「つぇぇぇぇぇぇ」「いゃぁぁぁぁぁ」


 一気に五人ぐらい場外に行ったみたい。


『まぁたしてもぉぉぉ! 五人を一気に葬っていくぅぅ! しかし、この選手なんだか上の空なのに強い強い!』

 

 んー。あっ、混ぜるか。瞬獣雷拳しゅんじゅうらいけんみたいな? ダサいか?


「くらえぇぇぇ!」


 上空からの奇襲を仕掛けてきた。

 体重と重力を乗せた蹴りを放ってくる。

 コイツは鹿の獣人かな?下半身の筋肉が発達している。


 跳躍して上を取る。

 そして、蹴りを放ちステージに叩きつける。


ズドォォォンッ


 クレーターが出来てステージにめり込んでいる。ヒョイっと蹴りあげて場外に出す。


 んー。最後に拳付けんの止めようかなぁ。


「俺達兄弟が相手だぁぁ!」


 双子だろうか? 

 狼の獣人に左右を挟んで攻撃してくる。


「「狼獣流ろうじゅうりゅう 双挟拳そうきょうけん!」」


 左右からの凄まじい拳と掌底の攻撃が放たれるが、全て紙一重で避ける。


『これは凄まじい攻撃だあぁ! 左右からの凄まじい数の攻撃ぃぃぃぃ! しかぁし! チーターの選手は見向きもしないのに全て避けているぅぅぅ! 一体どぉなっているんだァァァ!?』


 んー。流ってのはちょっと良いかもなぁ。


「俺達を舐めるなぁァァァ!」


 両側から挟み込むように上段蹴りが放たれる。

 スッと腰を落とす。

 バキッと両方の足が交錯する。


 クルッと縦に宙返りして双方の足を上から踏みつけて動きを止める。

 そして、バッと両足を跳躍しながら開脚し、左右の獣人を場外に蹴り飛ばした。


『あぁぁぁぁ! 兄弟の凄まじい攻撃もなんのその! 二人同時に場外へ蹴り飛ばしたァァァ! このチーターさん凄い! 名前の資料を今探しています!』


 んー。俺は獣人であって獣人ではない。かぁ。幻ってのを入れるのもいいかぁカッコイイなぁ。


 周りはそれぞれで戦い始めた。

 ライクを倒すのを後回しにしたようだ。

 それ以外で強いやつを先に決めようと言うのだろう。


『これは、一旦諦めたようです! 他の選手がチーターの選手を…………ここで登録票が見つかりました! チーターの獣人のライク選手です! ライク選手を残して他の選手で一番強い者を決めようとしているようです!』


 んー。幻獣流げんじゅうりゅうとか。シンプルでいいかも。うんうん。


 空を見上げてウンウンと頷いている間に残りの選手が決まったようだ。

 目の前に立ち塞がるのは大きなゴリラの選手。

 胸を叩いてドラミングをしている。


『こぉぉれは大きくて強そうな選手が残りましたぁぁぁ! ライク選手は難なく他の選手を倒したがぁぁ、この選手はどうだろうかぁぁぁ!?』


 あっ。

 丁度丈夫そうなのがいる。


 目の前にいたゴリラの獣人を見て力を抜いて構える。ライクがこの大会で初めて構えを見せたのであった。


『あぁぁぁぁっとぉぉぉぉ! なぁんとぉぉ! 先程まで構えもしなかったライク選手でしたがぁぁぁ! 構え出したぁぁぁ! 先程まで上の空だったのは何だったのかぁぁぁ! 逆に気になりますねぇ!』


「おい! あんた、この大会なめてるだろ? 今初めて構えるなんておかしいぜ?」


「いや、なめてなんかない。ちゃんと構えてるだろ?」


「だーかーらー、今まで構えてねぇのがおかしいって言ってんだよ!」


「今まで? 何言ってんの? 予選始まったばっかりでしょ?」


「あぁ!? もういい。くたばれ!」


 突進して来ながら腕を引いて、いかにも打ちますよぉという意思表示をしている。


 おぉ。なんか丁度いいな。試すのには。


幻獣流げんじゅうりゅう


 腰を落として足を肩幅に開く。

 そして、手を一度前に出してから肘を曲げてそのまま後ろに引き絞る。闘気を腕に纏わせて、赤いオーラが立ち込める。

 

 もうゴリラの獣人は目前まで来ている。


幻双げんそう


 ゴリア獣人が拳の打ち下ろしを放ったのと同時のタイミング。ドンピシャで引き絞った掌底を射出する。


ドバァンッッ


 赤い衝撃波がゴリラ獣人の拳との間に発せられた。

 拳は、いや、腕は完全にへし折られ明後日の方向へ向いている。


「ぐぁぁぁぁぁ!」


 そのまま場外に出るが、まだまだ進む。

 勢いをそのままに観客の席がある壁に激突してクレーターを作り。気絶した。


『あぁぁぁ! 凄まじい攻撃ぃぃぃぃ! 今までのは遊んでいたんだと思わせるような一撃が放たれましたぁぁぁぁ! Fブロック! 勝者は! ライクぅぅぅぅせんしゅぅぅぅ!』


「「「わぁぁぁぁぁ!」」」


 俺はその実況に呆気に取られていた。

 何故なら、残り一人になったのを今、気づいたから。


「えっ? 予選終わった? 一人しかのしてねぇけど?」


 係の人が下りるように案内してくれた。

 ちょっと困惑しながら下りる。


 控え室に戻り、流派の名前など考えている間に大部分の人を倒していたことをタイガに聞いて驚愕したのであった。

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