第14話 武闘大会 予選開始
その日、国中の腕自慢が集まった武闘大会が開催された。パンパンッと魔法が放たれ、開始を告げる合図を鳴らしている。
闘技場には沢山のお客さんも押しかけ、大いに賑わっている。
このお客さんの中にヒメノがいる。
選手では無いため、今日は観客席にいる。
「タイガどこのブロックだった?」
「俺はLブロックだ。ライクは?」
「Fブロック」
「真反対だな」
「だなぁ。ま、タイガも頑張れよ! ミッコちゃんにいい所を見せないとな!」
「う、うるせえ!」
タイガは顔を赤くしながら照れ隠しに怒鳴る。
意外と可愛いところもあるんだよな。
最近それが分かってきた。
強がることが多いが、それも照れ隠しだと思えば可愛いと思える。
『それでは! これより武闘大会を始めます! 獣王様の挨拶です!』
闘技場の中心にある円盤上のステージに獣王が上がる。
あれが獣王か。
ステージに現れたのはオレンジの鬣が印象的なライオンであった。その風格は凄まじく。所々にある傷が歴戦の戦士であることを物語っている。
アニマ王国は元々種族毎に村が別れていて内乱が酷いような国だったそうだ。そんな状態を憂いた現獣王がそれぞれの村を赴き、時に話し合い、時には実力で国を統一したそうだ。
その偉大な国王は全国民に慕われている。
「「「わぁぁぁぁぁぁ」」」
すごい歓声だ。
両手を上げて手を振りながら登場する。
『諸君! 歓声をありがとう! 今日はこの国の最強が決まる大会だ! そして、優勝者には宝玉が送られる! それは、この私と同等の権力を持つことを意味する! 女も好き放題! 食べ物食い放題、飲み放題! 好きにできるぞぉぉ!』
えっ? それっていいの?
それには観客もおかしいと思ったのかしばらく沈黙の時間が流れる。
「このクソ獣王が!」
「気持ち悪い!」
「そんなことのために使わせねぇ!」
「あなた、お話があります」
「さいてー!」
なんだかすごい罵倒の中にヒヤッとする獣王に身近な人の声が聞こえた気がしたが、気のせいだろうか。
「えっ? 獣王ってこんなに感じ?」
「そうだな。ま、自分はそんな事しねぇけどな。パフォーマンスだよ」
タイガに聞くと平然とそんな奴だという。
パフォーマンスにしても言いすぎな気がするが。
『どうどう。それが嫌なら武闘大会に出て優勝するこったな。これはそういう大会だ。実力で全てが決まる! 誰を応援するかはお前たち次第だぁぁぁ! まともそうな奴を応援しろぉぉぉお!』
「「「おぉぉぉぉ!」」」
たしかに優勝すれば文句ないんだからそれはそれで、シンプルでいいよな。わかりやすい。獣王、おもしれえ。
『俺も楽しみで仕方がないからなぁ! それじゃあ、早速始めるぞぉぉ! まずは予選からだ! このステージに各ブロックの全員が上り。戦ってステージから落とす。最後に残った一人が決勝トーナメントだ!』
「「「わぁぁぁぁ!」」」
なるほど、そういう予選方法なのか。
間違って落ちないようにしないとな。
一気に減るなら面倒が無くなるし、丁度いい。
一人一人と戦うなんて面倒だからな。
一気に予選決めようかな。
『それでは、Aブロックの方はステージへ!』
闘技場の上部には投影魔法でステージの様子が映し出されている。魔法陣を操り、それぞれの選手をアップにしたりして観客を湧かせている。
これ凄いな。
こんな魔法があるんだな。
魔法陣か……まだまだ勉強するのがあるな。
獣人が操作しているところを見ると魔力が少なくても運用できるんだろうな。興味があるな。後でEveさんに聞いてみよう。
まずは、この武闘大会で優勝するんだ。
話はそれからだ。
Aブロックの予選が始まった。
それは、ただの乱闘だった。
勝ったのはボコボコになりながらも耐えた黒い熊の獣人であった。
あれ?
「なぁ、タイガ? 獣人って闘気を使って戦うんじゃないのか? 全然使ってなくね?」
「あぁ。言ってなかったか? 闘気使えるやつは極僅かだ。まぁ、決勝に上がってくるような奴らは大体使えるぜ?」
それ聞いてないんですけど。
なんで俺は使える前提で鍛錬させられたんだ?
「そんな不思議そうな顔されてもな。ライクは、使えねぇわけがねぇだろ? あんなに強えんだから。ただ、そう思ってただけだ。結果、使えたからよかっただろ?」
なんて適当な。
「ほら、アイツは使えるみたいだぜ?」
今やっているのはBブロックの試合だ。
この試合は終始一人の狼の獣人が圧倒している。
何人もを一撃で場外に吹き飛ばしている。
たしかに闘気特有の赤いオーラが出ているからわかりやすい。なんか使ってくるのが、拳法っぽいな。
「アイツは……
「へぇ。タイガもどっか入ってんのか?」
「はっ! 俺はあんな型にハマった戦い方は合わねぇよ。我流だ」
めっちゃドヤ顔された。
我流っていうのがカッコイイと思ってるんだろうな。だけど、ああいうのって結構強かったりすると思うんだよなぁ。
何よりかっこいいよな。
俺もなんかやろうかな。
今更か。
「カッコイイな」
「そ、そうか?」
「あっ、お前の我流じゃないぞ?
「チッ! なんだよ!」
「いやいや、タイガ、俺に負けてんのにタイガの我流いいなぁって思うと思ったか?」
「思ったわ! くそっ! そんなにいいなら作ったらいいんじゃねぇか?」
それは意外な意見で俺は感動した。
「タイガ!」
ガシッと両肩に手を置く。
「な、なんだよ?」
「ナイスアイデア! 俺の流派を作ろう!」
もう少しでFブロックの予選が始まろうとしていた。
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