第5話 本格戦闘訓練
「一応言ってたから大丈夫だろうけど……」
部屋から出てヒメノの部屋をノックする。
なんでか少し緊張してしまう。
イタズラがバレてしまう時のような感覚に似ている気がする。
「はぁい」
中からヒメノが開けてくれた。
目が合うと驚愕している。
「で……」
ヒメノが固まっている。
「で?」
聞き返すと。
「デカ過ぎない!?」
言いたいことはわかるぞ。
たしかに、俺も加減を間違えたと思っている。
それに、身体に引っ張られてか、話し方も変わってしまった。
「だな。加減間違えちまったみたいだ。まぁさ、デカイ方が戦うのには有利だよな?」
「多分ね。私は加減間違えないでよ?」
「分かってる。飯行こうぜ?」
ヒメノを伴って食堂に向かう。
向かう最中にナナさんに会った。
「あっ! ナナさん、昨日は有難う御座いました! 今日は戦闘訓練ですかね?」
「えっ!? 誰!? ヒメノちゃんを連れてる……」
困惑しているようだ。
そりゃそうか。
こんだけデカくなったら驚くわな。
「ライクです」
「えっ……あの可愛かったライクくんが……」
可愛いと言ってくれて有難う。
そんなにガッカリしないで。
目の前には四つん這いになって落ち込んでいるナナさん。
そんなに!?
そんなに衝撃だった?
「あの可愛い……ライクくんが……」
「ナナさん、現実見てください。明日には私もボンキュッボンッですよ」
小さい身体をピーンと伸ばして。
偉そうにそう告げてくるヒメノ。
「それはわかんないけどな。成長させるだけでその辺の調整難しいからな」
ジト目でこちらを見てくる。
やれって?
やってはみるけどさ。
俺も筋肉質にしたし。
「ナナ? 何してるの?」
「あっ、イブさん、おはようございます!」
「……あっ、ライクね。随分大きくなったのね?」
「ちょっと、加減間違えました。朝飯食ったら訓練ですかね?」
「そうね。その身体だと私じゃない方がいいわね。デカい相手を用意するわ」
「はい!」
食堂にて、ジロジロと見られながら食事をしてイブさんの案内で訓練室に行く。
ヒメノも気になるそうでついてきた。
「おぉ。そいつか? イブの息子にしたってぇのは?」
訓練所の前には大きな男が腕組みをして待っていた。
スキンヘッドの筋肉隆々の男。
「そうよ。あんたぐらいしか相手できないでしょ? このデカさだと」
「あぁ。そうだな。俺はガルドだ。宜しくな。隣の兵士団の副団長だ」
仲良さそうに話している。
昔馴染みといった感じだろうか。
そのガルドという男。
にこやかにしているが。
身体からは気合いというか威圧感というか。
気を発しているのが感じられた。
「ライクと言います! よろしくお願いします。戦う事は初めてです! ご指導よろしくお願いします!」
「あぁ。教えがいがありそうだ」
ボキボキと指を鳴らしながら訓練所の中に入っていく。
後をついていく。
俺の後ろをヒメノとイブさんもついてきた。
「よーし。じゃあ、まず基本な」
よく見るファイティングポーズでガルドが構える。
俺も見様見真似で構える。
少し修正してくれる。
姿勢を少し前屈みに。
左足を前にして右足は少し下げる。
少し立つことが安定した。
「そうだ。そして、パンチはこう」
シュッと音が鳴る。
鋭い突きである証拠だろう。
「こう?」
ブンッとパンチをする。
ガルドさんが寄ってきてアドバイスをくれる。
「肩からじゃないんだ。この突きはこっちの足で踏み込み。その力を腰に行き渡らせて拳に力を加えて出す!」
ボッと突きが放たれた。
なるほど。
人体の理論をしっかりと理解してやっているんだな。
ただ力を入れれば良いという訳では無い。
これは教えて貰ってよかった。
突きが出来たら次は蹴りを教えてもらう。
一通り動きを教えてもらうと後は実践訓練になった。
「一通り教えたからな! 後は、実戦戦闘だ! 実戦に勝るものは無いからな!」
「オス!」
組手を行うことになった。
ガルドさんが少しは手加減してくれているが。
それでも敵わない。
顔をボコボコに殴られ。
ヘトヘトになって休憩だ。
端に大の字に倒れる。
「ハッハッハッ! へばったか! じゃあイブやるか?」
「はいはい。コテンパンにしてやるわ!」
「フンッ! 言ってろ!」
イブさんとガルドさんが向かい合う。
「先手はやる」
「舐められたものね! しっ!」
いきなり回し蹴りを放つイブさん。
それをなんなく片手で受け止める。
が、重かったようで少しよろめく。
重ねるようにもう片方の足も振り上げ。
身体が宙に舞う。
そして、腰の捻りだけで蹴りを放った。
ズドンッという通常の蹴りではないような音が鳴り響き。
ガルドさんが、吹き飛んだ。
「ぐぅぅ!」
ズザザァァッと床を滑ると少しして止まる。
大の字になった。
息が上がっている。
「くそっ! いてぇ! やってられるか!」
「ふふふっ。まだまだね」
「イブ! てめぇ身体強化魔法使っただろ!?」
「使っちゃいけないなんて聞いてないわ」
「クソッタレ! こっちは闘気出さないようにしてたんだぞ!?」
「ふんっ。私の知ったことじゃないわ! うちの息子をボコボコにしてくれた礼よ」
イブさんはそう言うと訓練所を出ていった。
ヨロヨロと起き上がるとこちらに来る。
「おう。ライクは大丈夫か?」
「はい。何とか……」
何とか起き上がると。
ヒメノが近付いてきた。
「この者たちを癒しましょう」
どこからとも無く光が降ってきて。
体の痛みが。
なくなった。
「おぉ! すげぇな! 嬢ちゃんのスキルか?」
「そうです。私はヒメノといいます。やってみたらスキルを使えました」
「はははっ。ありがとよ。ヒメノは小さいのにとんでもねぇな!」
ガルドがそう言うと。
小さいは余計だったようだ。
「明日には大きくなってます!」
「はははっ! そりゃさらにとんでもねぇよ!」
笑いながら起き上がると訓練が再開された。
俺は、一日みっちりと訓練を受けるのであった。
徐々に強くなっている実感。
この世界は楽しい。
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