第4話 スキルの本領発揮

「誰? お兄……ちゃん?」


「ヒメノ!? 目が覚めたのか!?」


 ヒメノが起きていることを確認するや否や抱きしめる。

 前の世界でも、生きてはいるが目は覚まさなかった。


 やっぱり、スキルのお陰なのか。

 バイオ情報を弄った事により、身体の状態が良くなったのだろう。


 必死でスキルを使った時は、たしか身体の免疫力と回復力を最大に上がるようにしたんだよな。

 それは前の世界でもそういう風にしてたんだけど。


 細胞を弄って戻す。

 というのより、スキルで直接バイオ情報を弄るの方が効果がダイレクトだったみたいだ。


「お、お兄ちゃん!? 痛いってば!」


「あっ! ご、ごめん。久し振りに目を覚ましたからついな……」


「私達何処にいるの? 違う場所の気が……ここ家じゃないよね?」


 ヒメノが怪訝な目をして周りを見渡している。

 見知らぬ部屋に見知らぬ人じゃ色々と聞きたくなるよな。


「ライク、感動の再会は後でやろう? 今はナナに鑑定を……」


「あっ! はい! お願いします!」


 慌てて後ろにいたナナを前に通した。


「はいはぁい! ごめんねー!」


 ヒメノは困惑している。

 そりゃいきなり目の前に来たら驚くか。


「なんですか!?」


「ヒメノ。じっとしてて。すぐに終わるから」


 僕はヒメノを宥めて鑑定してもらった。


「鑑定!」


 ナナさんは、フムフムとかへぇーとか言っている。

 一体どんなスキルと属性だったのだろう。


「ナナさん、どうですか?」


「ふふーん。スキルがわかりやすいけどよく分からない! 女神だって! そして、属性は聖属性! 光の上位版だね! それじゃあ、私はご飯食べに戻ります!」


 そそくさと敬礼すると去っていった。

 なんかご飯中なのに僕達の為に申し訳なかったなぁ。


「なんか、あなた達凄いわね?」


 イブさんに褒められてしまった。

 俺たち兄妹は親に捨てられた身だった。

 妹だけは守らなきゃって必死だった。


 よかった。

 起きてくれて。

 よかった。

 生きててくれて。


「お兄ちゃん? なんで、泣いてるの?」


 気がつけば僕の目からは涙が溢れてた。

 僕の努力はここに来て実ったんだ。

 そう思うことにしよう。


「ヒメノが……目を覚ましたから……」


「もう。大袈裟だなぁ。で? ここどこ?」


 ヒメノが僕に詰め寄る。


「ここはダイナ王国の魔法師団基地よ。あなた達のいたスラムからは少し離れてるわね?」


 イブさんが説明してくれるが、ヒメノはそういう事を言いたい訳では無い。

 気づいているのだろう。


 何かが今までいた世界と違うということを。


「この人誰?」


 近づいてきて小さい声で話し始めた。

 同じくらいの声で答える。


「イブさんっていう魔法師団の団長。僕達が道行く人に蹴られてた所を助けてくれたんだ」


「へぇ。って蹴られたの!? 大丈夫!?」


「うん。大丈夫。イブさんが助けてくれたからね。僕達を養子にするってさっき言ってた」


「えぇ!?」


 ヒメノが驚きの声を上げてイブさんの方に顔を向ける。

 イブさんは首を傾げると。


「なーにー? どうしたの?」


「さっきの養子の話、本気ですか?」


「えぇ。本気よ。スキルを聞く前から受け入れてたけど、スキルを聞いた今、がぜん私の子供にする気になったわ。どちらも聞いたことがないユニークスキル。私が強くしてあげる!」


 それは、俺達にとっても願ってもないことである。

 衣食住を約束され、更に戦う術を教えて貰えるなんてそんないい環境はどこにも無いだろう。


「わたし、ヒメノって言います! 精一杯役に立ちます!」


 ピーンと背筋を伸ばして挨拶をする。

 ヒメノはやっぱり元気で可愛い。

 僕の妹は最強だ。


「ふふふっ。可愛いわね。ヒメノ。ライクはなんか頭が回る感じで可愛くないのよね?」


 そんな事言われても。

 僕はこれまで妹を助けることに必死に頭をフル回転して生きていたから。

 常に考えてないと不安なんだ。


「ははは! お兄ちゃん、可愛くないってぇ!」


「うるさいなぁ。あっ、ヒメノのバイオ情報見ていいか?」


「なに? いいよ?」


 ヒメノの情報を!


 ウィンドウが出てきて魔法属性を記憶する。

 スキルについての部分は文字化けしていて弄ることは出来ないようだ。


「イブさん、身体は大きい方が戦いやすいですよね?」


「まぁ、そうね。魔法師といえど、近接戦闘も行うから」


「明日に向けて身体を大きくするように試みたいと思います。成功したらヒメノもやります」


 僕が成功した暁には次はヒメノだ。

 二人で一気に大きくなれば。

 あとは、戦闘技術を磨くだけ。


「わかったわ。試してみて。何かあったら部屋の通信機で管理室に繋がるわ」


「わかりました」


 その日はそれで解散になった。

 ヒメノとも別れて自分の部屋に戻る。


 シャワーを済ませて。

 いざ、バイオハッキングの時間。


 自分のウインドウを開く。

 身体の部分を変更する。

 

 筋肉質になるように。

 身長が大きくなるように成長速度を早くする。


 ウインドウを戻して、適用する。

 あんまり違和感が……。


 ドクンッと心臓がなった。

 段々と心臓が跳ねる。

 目眩がしてくる。


 ベッドに寝る。

 意識が遠のいていく。




 朝日で目が覚めた。

 何だか苦しい。

 起き上がると。

 首が閉まってる。


 首が閉まっているものを引きちぎった。


「プハッ! はぁ……はぁ……はぁ。死ぬとこだった」


 ちぎった物を見ると。

 昨日着てた服だった。


「あぁ。ちいせえ服着てたからか。下もだ」


 服を脱ぎ、用意してた大きい服を着る。

 なんか。思ったよりデカくなったな。

 二メートルくらいか?

 加減間違えたな。

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