第9話 成長と旅への準備

「もう寝るぞ

ここにぶら下がって寝れるか?」


ベッドのヘッドボードがちょうど柵状なので、そこにぶら下げてみる


『大丈夫ですぅ』

『問題ないですー!』


「OK」


とりあえずピルプルがぶらさがってる下に布を敷いておく


何の為って?

察してくれ


電気のスイッチを押して明かりを消す


そういやこのログハウス、どういう原理なのかは知らないが電気が通っていた

しかも電気線は地面に埋もれていて更に謎が深まるばかりである


「おやすみ…」



バタバタバタバタッ


ベチャッ



「ん…?」


電気を消して数十分後


部屋で何かが飛び回って落ちた音がした


慌ててスイッチを押すと…


「ピルプル?」


部屋の隅で、ピルプルが身を寄せあってカタカタと震えていた


外で余程怖いめにあっていたのか、少しの物音でパニックを起こした様だった



蝙蝠って夜行性だから暗くても平気だと思っていたんだが…



「ピルプル…

怖がらなくても何もいないぞ」


震えるピルプルを手で掬って頭を撫でてやる

少し震えが収まった気がした


「ほら、ここなら大丈夫だろ

それとも怖いなら一緒に寝るか?」


布を畳んだだけの簡易の枕をトントンと叩く


『ご主人様ぁ…』

『抱っこしてくださいー…』


「抱っこか

それなら手を添えてやるから首元にしとけ

胸元は寝返りでもしたら危ないからな」


再び電気を消す

抱いて寝たら、2匹は安心したのか朝まで起きることは無かった





『…さまぁ!』

『ごし…ま…!』



なんだか身体中がとても痛い


骨がミシミシ鳴っている音が聞こえる


遠くでピルプルの慌てた声が聞こえているのだが、瞼が思うように開かない



『ご主人様ぁ!』

『大丈夫ですかー…!?』


何度も呼ぶ声に反応して、俺は瞼を無理やりにこじ開ける


ガラスが嵌っていない木で出来た窓の隙間からは、朝日が差し込んで部屋の中を照らしていた


まだぼんやりとしている視界

手の中にいたピルプルに目を向けると、何故だか一回り小さくなっていた



「ピル…プル?

お前らなんで小さくなって…」



『ご主人様おきたぁ!』

『逆ですー!

ボク達が小さくなったんじゃなくて、ご主人様が大きくなったんですー!!』


痛む体を起こし、掛け布団代わりにしていた薄い布を取り去る


着ていた子ども用の薄いシャツなどは破れ、ほとんど裸に近い状態だった

6歳児の体は姿を消し、俺は大人に近い体にまで急成長していた



「これは…?

なんで体が大きくなって…」



とりあえずステータスを確認した


------

【名前】黒曜

【種族】異世界人

【年齢】0歳(13歳)


Lv.15/****


HP:70/∞

MP:780/∞

SP:780/∞

力:70/∞

魔力:****

素早さ:70/∞

命中:100/100

運:100/100


従魔

ピル

プル


特殊スキル

鑑定眼Lv3/5

創造Lv1/4


------


「13歳?

え、名前……」



黒曜…?



いつの間に名前なんて付いていたのか

Lvを上げる前は付いていなかったから、多分あげている最中か、寝て体が大きくなった時か

体が大きくなったのは多分、Lvが上がったからだと思うが…


とりあえず



俺の名前は今日から《黒曜》になった



姿見が無いので今は全身を見ることは叶わないが、目線がかなり上がったのでそれなりに身長があるはずだ

たぶん160後半から170cm辺りだろう

13歳にしては自分でも高い方だと思う


新しく作った服に着替え、ローブも新調しておく


その後はリビングで昨日作った晩飯の残りをピルプルと食べた

1人前は食べたのだが、成長した為か腹が減って仕方ない

追加でワーム肉を焼いたのだが、昨日倒した分を食べてもまだ腹が空いた


どうなってるんだ?


それはピルプルもどうやら同じ様で、食べ終わった今でも腹5分目くらいだという


またワームかトカゲを狩らないと


そうだ、ピルプルはLvが元に戻って今はLv5らしい


「少しは戦力になれますー!」


とプルが小さな手でガッツポーズをした


可愛いが、本当に大丈夫なんだろうか?



狩りに行く前に、庭の菜園を見に来た

アロエやニンニクだけでなく、ホーリーバジルも収穫可能になっていた


早過ぎないか?


ホーリーバジルは希少みたいだし、この事を人に話したり見せたりするのは極力止めておこうと思った


こんなの見つかったら、絶対悪い奴らとかに悪用されるだろコレ


それで奴隷にされて、死ぬまでこき使われそうだ


とりあえず全て収穫して、ある程度を苗にしてからまた植えておく

グングン育てよー




『ほ、本当に大丈夫ですかぁ?』

『怖いですー…』


砂漠を前にして表情が固まり、恐怖に震える2匹

風が吹いて、砂が巻き上がるだけでピルピルプルプルしている


「お前らも体感したとは思うが、結界があるから大丈夫だ

とりあえずワームをおびき寄せるから、出てきたら攻撃しろ

危ないからLvが上がるまでは無理してジャングルから出て戦おうとはするなよ」


『わ、分かったですぅ!』


ワームは目が退化している分どうやら音に反応しているようで、魔法で作った石ころを砂漠に撃ち込んだらその場所から大量に地面から出てきた

うは…


「今だ!

とりあえず1番手前から攻撃してみろ」


『は、はいー!』

『えいっ!』


俺の得意技であるスラッシュを、2匹が同時に放つ


戦う前に木に向かって練習しておいたので、思ったより命中率が高い

威力は大分弱めだが、なんとか傷をつける事には成功した

怒ったワームがこちらに砂埃をあげながら遅いかかってくる



だが残念、結界は頑丈である



バンッと音を立ててワームが結界にぶつかる

そこに俺がスラッシュを放った


肩から攻撃をしたピルプルを見ると少し震えてはいるが、倒れたワームを驚きの表情をしながら飛び跳ねている


『す、凄いですぅ!?』

『ボク達が以前攻撃した時は、傷なんてつかなかったですー!』


それは契約の効果だろうか?

何はともあれ食料ゲットだ


「腹いっぱい食べたいだろ?

もう少し狩ってから家に戻って昼飯にしよう」


『『ごはーん!』』


ポヨンポヨン肩で飛び跳ねる

落っこちるなよ?



ピルプルのMP残留がギリギリになるまで狩りを続け、無くなる手前で昼になった


「よくやったなピルプル

頑張ったから肉が沢山とれたな

やれば出来るじゃないか、偉いぞ」


『えへへっ』

『いっぱい攻撃したからボクお腹が空きました、ご主人様ー!』


体格差もあるので2匹に魔物を恐れるなというのは無理があるかと思っていたが、震えながらも必死に戦っている姿を見て俺はいたく関心した


これだけ闘う勇気があるのであれば、ワームや他の魔物が出る砂漠の荒野を抜けて一緒に北にある村まで行けそうだな

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