第10話 旅立ち
デザートデスワームを解体している時にふと思った
あの口に生えている太くて頑丈そうな歯をナイフなどに出来ないかと
そこで意識して分解してみると《下級ワームの歯》がとれた
その結果、鍛治に新しくcoming soonの文字が追加され、必要なLvが1だったので解放すると《下級ワームのナイフ》と出た
魔法…いや、創造スキルはやはりイメージが大事なのだ
創造スキルのLvを上げさえすれば、自分の望んだ物が作れるようになるのではないかと思う
相変わらずスキルはLv1のままだが、それもステータスの方のLvを上げていけばいつか分かる事だろう
そして予想外な事があった
アクセサリーもワームの歯で作れるようになっていたんだ
試しに作ってみて鑑定眼を使うと
《下級ワームの指輪 耐毒(小)》
が出来ていた
耐性は小だがちゃんと付いている
見た目はなんの飾り気もない、ゴツめでクリーム色の指輪だ
とりあえず嵌めておく
歯の素材は沢山あるので、イーサン達が持っていた耐暑(小)とステータスに何かプラスになる物が出ないか検証ついでにどんどん作って鑑定していく
30個目を作った辺りで作業を一旦止めた
「んーっ…」
前かがみの状態で夢中になって作っていたので肩が凝ってしまった
昼飯を食べたピルプルはアクセサリーを作っている時間が長かったからなのか、いつの間にか肩の上で昼寝中
すぴーと小さく寝息を立てている
可愛いな
指輪の成果は上々だ
耐暑、耐寒などの環境に適応出来る物や、素早さやHPが+5になる指輪が出来あがった
だが、残念ながら懸念している魅了などの洗脳系の耐性が付いたアクセサリーは出なかった
もしかして下級スキルでは作れないのだろうか?
それかレア度が高いのかもしれない
デザートデスワームはDランクの魔物だ
また違う魔物が見つかれば、その骨や歯などで試してみよう
『ご主人様ぁ
欲しいって言ってた指輪出来たのぉ?』
ピルプルが起きた
「あぁ
ピルプル、急だが明日の朝この家を出るぞ」
『『え……えーー!!?』』
ピルプルに耐暑の指輪を付けることは出来なかったが、俺に触れている間であれば従魔なら効果が出るようだった
外へ出た途端に襲ってきたワーム達を一掃し、ジャングルへと振り返る
この安全地帯のおかげで生き延びることが出来た
ありがとうジャングル
出来れば、せっかく作ったログハウスも解体して持っていきたかった
「ログハウスだけとは言わず、ジャングルごと持っていきたかったな」
ピロンッ
《ジャングルとログハウスを収納しますか?》
……嘘だろ、おい
北に向かって30キロ
車などならまだしも、徒歩でこの距離はそれなりに時間がかかるだろう
太陽を見ながら歩いているので迷わないとは思うが、魔物に気を配り、様子を見ながら歩いているので半日以上はかかるだろうと予想している
飲水は魔法が使えるし、万が一の場合は収納したジャングルを取り出そうと思う
砂漠の荒野にジャングルなど、明らかに不自然なので人目について目立つ様な事は出来れば避けたいのだが、命には変えられないしな
「ピルプル大丈夫か?
辛くなったらすぐに言うんだぞ」
ローブの内側に話しかける
歩いているのは俺で、ピルプルは肩に乗っているので魔物が出た時以外はほぼ体力は使っていないと思うが、体が小さいので少し心配である
『大丈夫ですー!
お外は怖いですが、ご主人様といればヘッチャラですー!』
むふーっ、と小さな胸を張って言う
うーん、可愛い
思わず頭を齧りたくなるな
『何か寒気がしたですー!?』
「気のせいじゃないか?」
「見えたぞ、きっとあれが村だ」
高めの木の柵で囲われた、質素という言葉がよく合う村が遠目からでも見えた
見張り台から誰かがこちらを見ていたので、手を振る
「いいか
言った通りにするんだぞ」
『はいですぅ!
他の人がいる時は隠れて念話で話しますぅ!』
ピルプルは小さいといっても魔獣だ
見つかれば討伐されないとも限らない
他人には見えない様に懐に入れて、村の入口の前まで来た
「こんにちは!
すみません、南から来たのですが都市にはどちらへ向かえば良いか教えていただけませんか?」
砂漠では砂や日光の対策の為にローブは必需品なので、目が見えないくらい深く被っていても不審には思われないだろう
見張り台から降りてきた人に挨拶をしてから俺はニッコリと笑う
「南?
お前さん貧困街の人間か?」
「違いますが、近い所に住んでました」
ふーん、と疑わしそうにジロジロと見てくる
「都市へはここから北北東に進んだ先にあるが、何しに行くんだ?
仕事探しか?」
「そうです
あとダンジョンに行こうかと思ってます」
嘘ではない
バーナードが教えてくれたが、ダンジョンの生物や植物は地上の生物とは違い、瘴気を纏わずとても美味いのだという
しかもダンジョンごとに色々な種類があるのだとかなんとか
ワームやトカゲだって食べられない事は無いが、美味くは無い
これは是が非でもダンジョンで食材調達をしたいところだ
ただ、ダンジョンに入るにはギルドカードという物が必要になるらしく、ダンジョンに入れるランクもその国によって決まっているらしい
美味いものが食べられるのはいつになる事やら
はぁ…
なんだか食材のことを考えていたら腹が減ってきた
「南から来たヤツらは身分証を持っていない奴が多いが、お前さんは持っているのか?」
「持ってません」
「だろうと思った
着いてきな、仮の身分証を発行してやるよ
都市プジェトには身分証が無いと入れんからな」
「ありがとうございます!」
こっちだと手招きされ、すんなりと村に入れてもらえた
ここに来て良かった
都市に入るのに身分証がいるとは知らなんだ
仮の物でも、すぐ発行してもらえるなんてラッキーだ
村は分厚めの白い土壁と、木とワラの屋根で出来た民家が立ち並んでいた
地面は石畳などで舗装されず、土のままだった
砂漠は雨が殆ど降らないので、泥になってぬかるんだりしにくいからやらないのだろうか?
「ここだ」
民家ではなく、広めの小屋に連れてこられた
中では数人の人間が、木の板に何やら文字を書いて忙しそうに働いている
市役所みたいな感じだろうか
「お前さん名前は?」
「あ、黒曜です」
「コクヨウ?
変わった名前だな」
そうなのか?
確かに発音がバリバリの日本語だしな
「はは、たまに言われます」
「ふむ、まあいい
コクヨウ…と」
木の板に名前を書き、その上から赤い判を押す
「ほらよ、これが仮の身分証だ
無くしたら再発行するのに金がかかるから気をつけろ」
あっ
そういえば俺、こっちの世界の金持ってないわ
仮の身分証をローブのポケットに突っ込み尋ねる
「分かりました
あの、この村のどこかで肉か布とかを買い取ったりしてくれる場所ってありますか?」
「それなら村の北にある何でも屋が買い取ってくれるぞ
質によって値段は変わると思うが、しっかりしたおカミさんがやってる店だから足元を見てふっかけられたりする事はないと思うぞ」
「ありがとうございます
早速行ってみます」
「ああ、都市までは魔物が多く出るが気をつけて行くんだぞ」
「はい!」
頭を下げて礼を言い、何でも屋へ向かった
案内してくれた人がいうように、店の女性はしっかりしているがとても優しくて良い人だった
肉と布を買取してもらえた事で少し懐も温まり、俺は都市に向かって再び砂漠の荒野を進む
2匹の小さな従魔と共に
第一章[完]
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