第4話
それからも、あたしは何回も何回も『
「アレサ! ウィリア! 知ってる⁉ 今、山の麓のラムルディーアでスイーツ食べ放題フェアやってるって! せっかくだから、一旦戻ってそれ食べてから……」
でも……。
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「あっちゃー……。魔王戦、今日はやめといたほうが良いかもよー? 今日のあんたたち戦闘運が大凶で、何やっても上手くいかないみたいだよー? ちなみに、ラッキーアイテムは『装備すると回避率が上がる武器』、ラッキーモンスターは『終盤で出てくる、序盤のボスと色違いのザコモンスター』だってー。だから、今日のところは……」
どれだけ繰り返しても……。
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「え、魔王? それってここじゃなくて隣の山じゃない? ここにいるのは『最凶最悪の魔王』じゃなくて、『体調最悪の佐藤』だよ? 体調悪いときの佐藤さんって、すっごい機嫌も悪くなるから、今はそっとしといたほうが……」
あたしの説得が上手くいくことはなく……。
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「ふっふっふっ……よくぞ見破った! そう、何を隠そうこのあたしこそが、真の魔王だったのだー! ぬははははー! さあ、アレサとウィリアよ! 逃げるあたしを捕まえてみるがいい! わー」
……というか。
あまりにも上手くいかなすぎて、だんだんあたしも迷走してきちゃって……。
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「魔王は、いるよ……。あたしたちみんなの心の中に……。いつまでも、いつまでも……
最後のほうは自分でもワケわかんないことばっか言って、ほとんど説得になんてなってなかったんだけどね……。
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ま、まあとにかく。
細かいのも合わせると余裕で百回以上の「今日」を繰り返した結果、分かったことは…………あたしにアレサたちを説得することは無理、ってことだ。
だってあの人たち、マジで聞く耳持たないっていうか……自分たちの世界に入っちゃってるって感じなんだもん!
……とはいえ。
だからと言って、あたしは彼女たちを救うことを諦めたわけじゃない。
このままアレサたちを魔王と戦わせてしまったら、彼女たちは負けて倒されてしまう。その事実は、相変わらず何も変わっていないんだから。友だちを守るためには、このままでいいはずがないんだから。
だからあたしは、アプローチを変えることにした。
説得がダメなら……平和的な解決が、出来ないのなら。もう少し「乱暴な方法」を選ぶしかない、ってことで。
「アレサ、ウィリア……久しぶり」
もう何十回と言った言葉を、あたしは彼女たちに言う。
「なっ⁉」
「あ、エミリンだー!」
ボロ小屋に入っちゃうと、どんなルートを選んでもアレサの
だからあたしは、アレサたちがボロ小屋に到着する更に少し前まで時間を戻して、障害物が少ない開けた広場のような場所で、二人を待ち伏せした。
「非戦闘職の貴女が、こんなところにいるのは危ないわよっ⁉ 今すぐ私が……」
そう言って、アレサはまた
「あんたたちは、この先には行かせない。このまま進んでも、犬死するだけだから」
持ってきた
「それを、今からあたしが教えてあげる。非戦闘職でよわよわなあたしが、
「ちょ、ちょっとエミリ……貴女いったい、何を……」
「えー……エミリン、大丈夫ー?」
元は、勇者パーティの一位と二位。しかもアレサに至っては、ちょっと前に本物勇者のオルティを倒しちゃったくらいの実力者だ。
正直、無謀にもほどがある? 瞬殺されて終わりでしょ、って?
……そうね。
きっと、誰だってそう思ってる。アレサたちだって、そう思ってる。だからこそ……あたしはこの子たちには負けることはない。むしろこの方法は、あたしが考えつく中でも一番確実な方法なんだ。
正直、「力づく」なんてあんまりやりたくなかったんだけど。説得が成功する確率が1%でもあるんだったら、そっちが出るまでリセマラ上等だったんだけど。これはあたしの性格的にも、最後の手段だったんだけど……。
でも、仕方ない。
アレサたちを救うためには、これは避けられないんだから。
「あんたたちを魔王と戦わせないために、あたしはここであんたたちと戦う。あんたたちを助けるために……あたしはあんたたちの邪魔をさせてもらう」
二人には、少し痛い目にあってもらうよ。転生者の最強スキルで、無双させてもらうよ。
つまり……。
「つまり……この先に進みたければ、あたしを倒してみな、ってことだよ!」
そしてあたしは、アレサとウィリアに斬りかかっていった。
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