内緒のダブルデート(KAC20235)

都鳥

内緒のダブルデート

 花ちゃんと、夜の教室に忍び込むのはこれが初めてじゃあない。


 窓際のグラウンドが見える誰かの席に勝手に座ると、前の席を後ろに向けて花ちゃんが座る。

「やっぱり夜は静かでいいね」

 二人とも人が多いのが苦手だから、この時間が楽しみなのだ。


 女の子の話題と言えば、大抵は決まっている。オシャレの話か、甘い物の話。それから、恋バナ。

 でも二人ともオシャレや食べ物に興味がないので、今日の話題も必然的に男の子の話になる。

 といっても互いに彼氏持ちだから、好みを話し合う風にしてノロケ話をするだけなんだけど。


「彼はさー スリムで清潔感のあるところがまたいいのよね~~」

 ほぅとため息を吐きながら、うっとりとした顔で花ちゃんが言う。


 綺麗好きの花ちゃんは、とくに清潔感が譲れないらしい。彼が色白なところも彼女の好みなんだそうだ。

 私から見たら全然物足りないんだけどな。色白なのはともかく、やたらとひょろっとしてて、なんだか頼りなさそうで。


「てっちゃんは筋肉が好きだもんねー」

「うん、やっぱり頼り甲斐のある人がいいのよね」


 仲良しの花ちゃんと、男子のシュミが合わなかったのは、逆によかったと思う。そうでなければ、恋のライバルになっていたかもしれないし。


 スカートがとてもよく似合う可愛い花ちゃん。対して事故で下半身が動かせない私はあんな可愛いスカートを履くことすらできない。もし同じ男子にアタックしていたら、勝ち目はなかっただろう。



 そんな風に互いの彼氏の話に夢中で花を咲かせていると、突然教室のドアが開いた。

「待たせてごめんね」

 入って来たのは私たちの彼氏たち。今夜はダブルデートなのだ。


 花子ちゃんは、カタカタと笑う骨格標本の彼の腕に嬉しそうにしがみついた。

 動く人体模型の彼が、上半身だけの私を優しく抱き上げる。

「さあ、今日はどこに行こうか、テケテケちゃん」


うん、やっぱり私は、筋肉の方が好みだな。

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内緒のダブルデート(KAC20235) 都鳥 @Miyakodori

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