第171話 役目

白いローブを纏って戦う美少女。

絵になる。

まるでファンタジー物の一場面を切り取ったかのようだ。


「御門くん、大丈夫?」

「ああ、たいしたことない」

「『ヒール』 どうかな、痛み取れてる?」

「うん、全然痛くなくなった」


結局、賢者のローブは1番倍率の高かった舞歌が装備することになった。

メンバー4人というか舞歌を除いた3人の意見が即一致。


「舞歌が使うのが1番でしょ。舞歌頭いいし。賢者っていうより聖女って感じだけど」

「あ〜それいえてます。聖女っぽい。色も白だし似合いそ〜」

「そうですね。舞歌さん一択です。英美里さんはちょっとイメージじゃないです。英美里さんは黒の方が締まって似合うかもです」


みんなに選択を委ねたのは正解だった。

揉めないといいなと思ってたけど完全に俺の取り越し苦労だった。

あっさり決まって拍子抜けしたけど、俺の選択は間違ってなかった。

こういう時は自分で決めようとしちゃダメだ。

任せるに限る。

前回の失敗から俺は学んだ。

自分で自分の成長を感じる。

そもそも、こんなの俺に選べるわけない。

そして舞歌による賢者のローブ装備は劇的な効果を生んだ。

元々高かった舞歌のINTが×⒈4された事で『ヒール』の効果が格段に上がった。

どうやらINTの高さは魔法系スキルの効果に直結するようで、今使ってもらった『ヒール』で瞬時に痛みが引いた。

今なら、骨のヒビくらいなら『ヒール』で治ってしまいそうな気がする。

元々舞歌の『ヒール』には助けられていたけど、痛みが和らぐ。軽度の傷が回復する。怪我の治りをはやめるといった効果だったので、ここまで劇的に効果があるとモンスターと戦う時の安心感が全く違う。

ボウガンなどの武器を使っているとはいえ舞歌が直接的に戦闘に及ぼす影響力はそこまで高くはない。

俺からすれば、回復系のスキルを使えるというだけで、パーティに対する舞歌の間接的な貢献度は計り知れないと思っている。

だけど、舞歌がその事を気にしているのを知っている。

こちらに気を遣っているのか、態度にあらわす事は少ないけど、時々漏らす言葉からそのことが窺い知れてしまう。

その意味でも舞歌に賢者のローブが渡ったのはよかった。

これだけ目に見える効果が得られれば、舞歌本人も自分の重要性に気づいてくれるだろう。

それにしても、これだけの効果にVIT×1.5ってかなり優秀な気がする。

やはり『ガチャ』で出る景品は時々本当の当たりが混じっている。


「御門、これで2度目だから。次は私用も欲しいかも」

「それは、うん」

「舞歌も喜んでるし、私も嬉しいけどかわいいし、いいなぁ〜」


これは、そういう事か。

俺は学習している。


「英美里さん、よかったら今度一緒に服を買いに行ったりしますか?」

「え〜っ、いいの?」

「是非、行きましょう」


女の子4人のパーティに男が1人とはこういう事だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る