第157話 岸田はメガネをかけてない

「クソがっ、俺は岸田だ〜! 俺が岸田だ! ゴブリン風情がこの岸田を舐めんじゃねえ! うぉおおおお〜!」


覚悟を決めた岸田がホブゴブリンへと突進していく。

口にする言葉が誰に向けてのものなのかはハッキリとはしないが、腹の括り方というか開き直り方は素直に感心してしまう。


「ホブゴブリンスレイヤーってあんまカッコ良くないな」

「そんな呼び名聞いた事ないぞ。多分誇るほどじゃないんだろ?」

「誇るほどじゃないって、結構強いんだけど」


もう1匹は岸田とは対照的に3年生がゆるい感じで相手取ってくれているので、特異個体のホブゴブリンに向かう。


「ああああああああ〜!」


俺の性分じゃないけど、大前達から意識を引き剥がすべく大声を上げてホブゴブリンの注意を引き、自分の方へと誘導していく。

元々ホブゴブリンのサイズはかなり大きいが、目の前の個体は上半身の筋肉が隆起し、その姿はさながらオーガを思わせる。

とはいっても実際にオーガを見た事はないのであくまでもそう思うだけだけど、脅威なのは間違いない。


「ギャギャギャアア」


速い。

通常のホブゴブリンよりも速い。

ただ、下半身はそこまで強化されていないのか、どうにかついていける。


「御門! 【アイスフィスト】」


三上さんがフォローしてくれるが、ホブゴブリンは当たる寸前に飛び上がり氷の拳を後方へと避け流した。


「うおおおお〜!」


上空のホブゴブリヘと水月を振るうが、空中で棍棒を振るい水月を弾き返してきた。

宙に浮いた状態なので、かなりその力は減衰しているはずだけど俺の手は痺れ、その力は完全に俺のステータスを凌駕している。

大前たちを1発でダウンさせたその威力は本物でまともに正面から力比べできるものではない。

いずれにしても手の痺れが取れなければホブゴブリンを葬るほどの一撃を放つ事は出来ない。

大前たちもまだリカバリーしきれていないようだしここは逃げの一手しかない。

大振りの一撃とはいえ、避ける事の出来るギリギリのスピード。

ホブゴブリンの一撃が身体の近くを通るたびに肝を冷やし急激に心身が消耗していく。

こんな事ならこの前召喚石を使い切るんじゃなかった。

飯綱がいればこのホブゴブリンくらいなら問題なく倒してくれていたと思う。

少し戦闘での有用性も頭をよぎらないわけではなかったけど、向日葵のお願いの前には殆ど意味をなさなかったのだから今更悔やんでも仕方がない。

妖精さんのサポートがあればもっと楽に戦えていた。

それも間違いない事実だ。

だけど、あの日向日葵の喜ぶ顔が見れて俺は幸せだったんだ。

それもまた事実だ。



大切なお知らせ

モブから始まる探索英雄譚のアニメは7月にTOKYO MX BS日テレ での放送が決まったみたいです。

作者も放送局は知らなかったので決まってよかったです。

そのうち追加で配信先も決まるのではと思います。

併せてアニメジャパン2024で

■TVアニメ『モブから始まる探索英雄譚』トークステージ

【日時】2024年3月24日(日)10:30~11:10

【場所】東京ビッグサイト 東5・6ホール J04 TOKYO MXブース

【出演】保住有哉(高木海斗役)、花澤香菜(シルフィー役)+シークレットゲスト


が決定です。

シークレットゲストが誰なのか全く知りませんが、春香役か主題歌の方かなと勝手に推察中です。

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