第156話 続く世紀末
「ギイアアアアアアアアアア〜!」
ホブゴブリンが残り3匹となったところで、そのうちの1匹が雄叫びを上げた。
仲間を呼んだのか?
モンスター相手なので雄叫びの意図はわからないけど、雄叫びを上げながらゴリラのように胸を叩きドラミングし始めた。
なんとなく、嫌な感じがする。
それは大前も同じだったらしく、背後から『ウインドブラスト』を放つ。
「ギャアア!」
しとめ損なった。
ホブゴブリンが後方へと顔を向けて大前の姿をその視界に捉えた。
「ギイイイイイイアアアアアア〜!!」
再び声を上げると、次の瞬間手に持つ棍棒で大前を殴り倒してしまった。
「ガハッ」
速い!
明らかに今までのホブゴブリンの動きとは異なる。
そして肉眼でも分かるほどに、その腕と胸の筋肉が膨れ上がり大きくなっている。
やばい。
大前は、ホブゴブリンの一撃で意識を失ったのか血を流しその場から動く様子はない。
「野本さん!」
「わかってます。『ゲルセニウムバイト』」
棘の蔦がホブゴブリンの動きを縛り付ける。
「ヒャアアアアッハアアアア〜!! 死ねよ!」
「ダメだ! 花沢くん!」
動きを止めたホブゴブリンを狙ってバーサクモードの花沢くんが襲い掛かろうとするが、俺の悪い予感が当たってしまった。
ホブゴブリンは棘の蔦を引きちぎり、迫る花沢君をはたき落した。
「ヒ、デ、ブウハアアアッ」
花沢君のやられ方が世紀末っぽいと頭の片隅で思ってしまったけど、今大事なのはそこじゃない。
明らかに眼前のホブゴブリンの強さが跳ね上がった。
感じる威圧感も今までの比じゃない。
少し異なるようにも感じるけど、ホブゴブリンのその姿があの三階層でエンカウントしたミノタウロスが強化した時と重なって見える。
あれと同じなら、俺じゃ無理だけど今戦っているのはホブゴブリンだ。
ゴブリンの上位種とはいってもミノタウロスとは比較にならないはず。
たとえ同種の強化だったとしても同じではないはずだ。
それにホブゴブリンの周囲には大前と花沢君が倒れている。
このままなら確実に殺されてしまう。
「神楽坂さん、俺が相手してる間に2人の回復を!」
「わかったよ」
「岸田! もう一踏ん張りだ! もう1匹はまかせたぞ!」
「ハァ? ちょっと待て! 俺はもうスキル残ってねえぞ!」
「お前ならできる! 頼んだぞ!」
「い、いや、ちょっと待て〜!」
「岸田、俺もフォローするから大丈夫だ! 『爆ぜる礫』」
俺1人でホブゴブリン3匹を相手取ることは出来ない。
1匹は3年生達にまかせたとしても、もう1匹は岸田達に頑張ってもらうしかない。
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