第154話 みんなが見てる

ホブゴブリンの2体は倒した。

もう一体も3年生の2人が連携して問題なさそうだ。


「ふざけんな! 俺を舐めんなあああああ〜! 『ファイアボール』 『ファイアボール』 『ファイアボール』」


岸田のファイアボール3連発。

先に放っていた2発と合わせ5発の火球を浴びたホブゴブリンがその場へと崩れ落ちる。


「どうだ〜! ホブゴブリンを俺が殺ったぞ〜!」


岸田の雄叫びがフロアに響き渡る。

岸田はホブゴブリンと戦うのは初めてらしいので、気持ちはわかる。

わかるけど、まだだ。


「おい、岸田盛り上がってる所悪いけどまだだぞ」

「はぁ? 大前何言ってんだよ。俺が倒したので最後だろうが。そういや、お前何の役にも立ってなかったんじゃねえの? もしかしてやっかみか?」

「はぁ〜違う。あれだよ。あれ」

「あれ? あぁ? おい、なんなんだよ、あれ。まだいるじゃねえか」

「ああ、いるな」

「あれもホブゴブリンか?」

「ああ、そう見えるな」

「…………」


今日の襲撃は数が多いな。

ざっと見た感じ10匹近くいる。

1年生の野本さん達はまだ来てないけど、こっちも人数揃ってるし問題ないか。


「岸田は、どれをやる?」

「お、俺? 俺はもういい」

「もういいってなんだよ」

「いや、だからもういい。俺の役目は果たした」


岸田もしかして……。


「岸田、まさかとは思うけどさっきのでスキル使い切ったのか?」

「バカ言うな。使い切ってはいないぞ」

「あと何回だ?」

「……3回」


3回か。さっき倒すのに5回使用していた事を考えると確かに倒し切るには厳しい気がする。

3回分をサポートに使わせるか?

いや、どう考えても岸田はサポートタイプじゃない。


「岸田、武器持ってるよな」

「もちろんだぜ」

「じゃあ、武器と『ファイアボール』3回で1匹はいけるな」

「へ?」

「みんな、お前の事見てるぞ」

「ふ、ふざけんな。1匹だ!? 2匹でも3匹でも来やがれってんだよ!」

「おう、頼んだぞ」


ホブゴブリンの特徴は、ゴブリンを大きくしたその体躯。そしてそれに比例するように増しているパワーと耐久性。

ただ、大きくなった影響からかスピードはゴブリンとそう変わらない。


「三上さん、神楽さんフォロー頼んだ!」


2人に声をかけてホブゴブリンの一団へと走る。

1人で10匹を相手にするには多いけど、岡島もいるし今回は大前もやるだろうからなんとかなるだろう。


「ガアッ!」


ホブゴブリンが振り回してきた棍棒を避けそのまますれ違いざまに水月を走らせ2匹目へと間合いを詰め、刃を滑らせる。

滑らかにヌルッと切断されるので水月の強度には心配が残るけど、ホブゴブリンの外皮を難なく切り裂く。


「さすが御門。『爆ぜる礫』」


目の前に迫るホブゴブリンの頭が爆ぜて仰け反る。

仰け反ったホブゴブリンの胸を貫き、後方へと下がりながら刃を引き抜く。

これで3匹。


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本日2/25(日)20時〜です(後日でもユーチューブ視聴可です)


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