第146話 今年一年ありがとうございます
「お兄ちゃん、ちょっとしつこい。何にもないから」
「本当か?」
「だ〜か〜ら〜」
「御門くん、そのくらいで。ほら、奥にモンスターだから」
「ああ、ごめん」
神楽坂さんに言われてダンジョンの奥へと意識を向けると大きな亀を思わせるモンスターがこちらへとゆっくり向かってきていた。
「初めてのタイプだな」
「なんか、硬そうね」
「動きは鈍そうなので、まずは私がやってみます。『ゲルセニウムバイト』」
棘の蔓が亀に巻きつき動きを阻害する。
一瞬亀の動きが止まる。
「ダメみたいです。ごめんなさい」
亀はすぐに歩き始め、棘の蔓がないかの如く引きちぎりながらこちらへと向かってくる。
「頭を狙えばいいんでしょ。まかせて。『アイスフィスト』」
三上さんがスキルを発動して亀の頭部を氷の拳が殴りつける。
「ガアアッ」
モンスターの短い呻き声が上がるが、それだけだった。
再び、何事もなかったかのように動き出す。
「うそ〜、頭も硬いの? これってどうやって倒せばいいのよ」
『アイスフィスト』をくらってあれだけ?
動きが鈍いせいでそこまで怖さは感じないけど、驚異的な硬さだ。
しかもこちらの2人のスキルがほぼ効果ないことが証明されてしまった。
残るは向日葵のスキルと直接攻撃しかない。
「『グラビティ』で動きを止めるから、お兄ちゃんがとどめをさして」
「わかった」
『グラビティ』
向日葵のスキルが亀の動きを止める。
重い敵には有効なはずだ。
俺は蝉時雨を手に亀へと走る。
距離が近づくと亀の大きさに圧倒されそうになる。
おそらくは小さなトラックくらいの大きさはある。
正面から頭を斬っても多分弾かれる。斬るなら側面から刎ねるしかない。
亀の側面へと走り、蝉時雨を振るおうとするが亀は俺の方へと顔を向け口を開けた。
歩けはしないようだけど、頭を動かすことはできたようだ。
「御門くん!」
神楽坂さんが援護に矢を放ってくれ、首の側面へと突き立つが、亀はこちらを向いたままだ。
俺は覚悟を決めて、開かれた亀の口へと蝉時雨を振るう。
亀に聴覚的な効果を求める事は難しいのか、特別な反応を見せる事なく、内側から口の端をさくことに成功した。
「ガッァ」
浅い。
しかも内からなのに硬い。
痛みに声をあげた亀の首が伸び、こちらへと迫ってきたので思わず後ずさる。
『アイアンストライク』
鈍い衝突音と共に亀の首が跳ね上がる。
向日葵!
一旦下がってしまった足を再び前へと運び、無防備となった亀の首へと蝉時雨を思いっきり薙ぐ。
お知らせ
アニメ化企画進行中のモブから始まる探索英雄譚ですが2/1に8巻が出ます。
まだ作業中ですがよろしくお願いします。
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