第137話 始まりの緊張感

「御門、おはよう」


『ガチャ』と近しい特性を持つスキルに興味深くスレッドを見ていると突然三上さんの声がした。


「三上さん、おはよう。ちょっと早いんじゃ」


スマホの時刻は9時30分を表示していて、約束の時間よりまだ30分も早い。


「それは、こっちのセリフ。結構早めに来たつもりだったのに。御門はいつ来たの?」

「俺は9時くらいだけど」

「それ、さすがに早すぎ。まあ、遅いよりずっといいけど」


三上さんは、ネイビーのパンツに上はターコイズと言えばいいんだろうか、オシャレな服を着ていていつも以上に大人びて見える。

学校でも、目立った存在だけど、三上さんの明るいロングヘアと相まって今日の出立ちは綺麗なお姉さんというのがピッタリと当てはまる。

ダンジョンでも私服は何度も見てるし、ショッピングモールでも見た事はあるけど、状況が異なるからか、コーディネイトが異なるからか、全く違って見える。


「うん? どうかした? もしかして私に見惚れてたり?」

「え? いや、まあ、そうだけど」

「〜〜〜〜御門」


思わず、口に出してしまったけど三上さんを見入ってしまったのは本当だ。


「御門も、今日はいい感じ」

「俺の持ってる服の中では1番を着てきたからな」

「……そうなんだ」

「向日葵にもよく言われるけど、俺センスないらしいから」

「全然そんな事無いと思うけど。ところで今日の予定はどうする? 映画でもみる?」

「それなんだけど、嫌じゃなかったら動物園に行かない?」

「動物園? 小学校の時以来かも。いいね」


大前とかにもアドバイスをもらったけど、結局向日葵の「英美里さん、猫とか好きみたい」というセリフで急遽動物園に行くことにしたのだ。

猫カフェという選択肢もあったけど、俺にとって馴染みがなさすぎたので、子供の頃に行った事のある動物園を選択した。

2人で動物園行きのバスに乗り向かう事にする。


「楽しみ〜。動物園か〜。ライオンとかもいたよね。虎もいたかな〜」


ただでさえ、隣同士の座席に緊張してしまうのに、嬉しそうに話す三上さんヤバい。

いや、なにもヤバくはないけど、その服装やいつもの大人っぽい感じとイメージが違う。

あげる動物の名前が猫科に偏っているので、向日葵情報は本当だったようだ。


「三上さん、ライオン好きなの?」

「ライオンかわいいよね。大きいぬいぐるみみたいじゃない?」


三上さんとはダンジョンでも並んで歩く事も多く、モンスターへの警戒感からいつも緊張感を持っていた。

今はモンスターはいないにも関わらず、それ以上の緊張感だ。

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