第132話 確信

探索を再開して程なくしてモンスターが現れた。

エンカウントの頻度だけでいえば、やっぱり前回来た時に全くモンスターが現れなかったのはイレギュラーだったと言えるかもしれない。


「なんか小さくないか?」

「さっきの狼に比べると小さく感じるけど、気を緩めちゃダメだよ。お兄ちゃん」

「そんなことはわかってるって」


現れたモンスターは獣タイプ。

大きさは俺がうずくまったくらいの大きさなので、先ほど戦った狼よりはずいぶん小さい。

そしてその風貌は、肉食獣というよりも草食を思わせる愛くるしい印象を受ける。

その数は三匹。そこまで多くないしいけそうだ。


「野本さん、頼んだ!」

「はい。いきます 『ゲルゼニウムバイト』」


野本さんの棘の楔がモンスターの一体を捉える。

これで、二体のみを相手にすればいい。

蝉時雨を構え、モンスターへと駆ける。


「御門くん、ダメ!」


後方からの神楽坂さんの声に反応して咄嗟に後方へと下がる。

その直後、野本さんが捉えていたモンスターが背中の毛を逆立て、それを周囲へと放つのが見えた。

細かな針のような毛が俺の前方を横切り奥の壁へと突き立った。

一本一本はそこまででもないかもしれないけど、あれをまともにくらったらとんでもなく痛そうだ。

まさに針千本を地でいく感じだ。


「ちょっとかわいいって思ったけど、危なすぎるでしょ。『グラビティ』 舞歌さん、英美里さん!」

「向日葵ちゃんナイス! 『アイスフィスト』」

「まかせて」


野本さんのと合わせて二匹はまかせて、最後の一匹へと走る。

モンスターの攻撃は全方位。

理想は遠距離もしくはモンスターが攻撃を放つ前にしとめることだけど、今の俺に遠距離攻撃はない。

それなら、先程の戦い同様、蝉時雨の能力に頼るのが正解だろう。

モンスターが毛を逆立てるより前に、少し遠めの位置から踏み込んで蝉時雨を一閃する。

当然、蝉時雨の刃は空を斬り、モンスターへとは届かない。

だけど、なんの動物なのかはわからないけど獣型である以上、感覚は鋭いはず。


「ギュアッ」


モンスターが少し可愛らしい声をあげ、嫌がる素振りを見せる。

蝉時雨の能力が効いた!

その間に更に間合いを詰め、モンスターへと斬りかかる。

見た目よりも、毛皮が硬質で硬いけどステータスに物を言わせてそのまま力任せに断つ。

サイズと風貌は狼のモンスターに劣るけど、普通に強かった。

神楽坂さんの声がなかったら針のむしろ状態になっていた可能性もある。

どうやら、他の二匹も三上さんと神楽坂さんがしとめたようだ。


「御門〜こっちも終わったよ〜。案外楽勝だったんじゃない?」


正直俺の方は楽勝ではなかった。

だけど、十分やれた。

やっぱり3層のモンスターは手強い。

それは間違いない。

だけど今度の戦いで確信した。

あのミノタウロスは完全なイレギュラーだ。



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HJ文庫モブから始まる探索英雄譚7が絶賛発売中です。

まだの方は是非買ってください。

来年8が出せるように頑張ります。

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