第126話×1.5
重さも普通の服程度しか感じない。
軽く身体を動かしてみても、特に異常は無さそうだ。
「呪われたりは無さそうだけど、効果もよくわからないな」
『愚者の衣』と名前があるくらいだから何かしらの効果を持ったアイテムだと思っていたけど、羽織ってみるとただ布を身につけたという感覚しかない。
少し拍子抜けしながら一応スマホのステータス画面を確認してみる。
LV11
HP61
ATK50
VIT44(×1.5)
INT3.1
AGI65
「あ……」
ステータス画面には今まで無かった表示が現れていた。
VITが(×1.5)と表示されている。
VITの解釈はちょっと難しいけど、HPが存在する事を考えるとVITは防御や耐久性に近いステータスのはずだ。
それが(×1.5)。
『愚者の衣』を外してみるとその表示も消えてしまった。
つまり、この『愚者の衣』を身につける事でVITが1.5倍に上がったという事だろう。
「これ、もしかしてすごいんじゃないのか」
武器を身につけた時にはこんな数値は表示されない。
もしかしたら常備する防具ならではなのかもしれないけど、この表示は何度見ても+ではなく×だ。
つまりは、俺のレベルに比例して効果も上がるという事なのでは。
それに今でこそ44あるVITだけど初期数値はおよそ5。
それが一気に22も上がっている。
掲示板でINTが上がるネックレスの書き込みがあったけどあれがINTの上昇は1。
それを考えても破格の性能といえる。
これを身につけているだけで初期ステータスの4倍近い効果があると言うことだ。
もちろん、前衛である俺が使うのもありだけど、この軽さなら女性陣が使うのもありだ。
これを身に付けるだけで、受けるダメージが全然違ってくるはずだ。
「向日葵〜ちょっといいか?」
「お兄ちゃんどうかした?」
「向日葵、ちょっとこれを羽織ってみてくれないか」
「それってドロップアイテム?」
「そう」
「いやだよ。呪われそうだし、ちょっと臭そうだし」
「そう言わずに。呪いは大丈夫だった。先に羽織ってみたから。それよりこれすごいんだ。VITが20もアップしたんだぞ」
「え? お兄ちゃん使ってみたの?」
「そう。だから向日葵も試してみてくれないか」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫」
向日葵はかなり渋っていたけど、ステータスの上昇が安全の担保になるのは理解しているのでどうにか羽織ってみてくれた。
「え〜ちょっとダサい。色も良くないし、マントってなくない?」
「そう言うなって。それよりステータス確認してみてくれ」
「はい、はい」
向日葵にもステータス画面を確認してもらう。
「どうだ?」
「お兄ちゃん、これ意味ないよ」
「なにが?」
「なにもない。これだと意味ないよ」
「いやVITの横に(×1.5)の表示があるだろ」
「ないよ」
「嘘だろ」
「本当にないよ。だってあるのは×1.0だし」
「1.0!?」
「そう。ステータスに1倍しても効果はゼロでしょ」
どういう事だ?
向日葵が嘘をつくはずもないので、向日葵が身につけても表示されたのは×1.0で効果が現れなかったみたいだ。
俺が身につけると確かに×1.5だったのにそんな事あるのか?
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