第116話 ポーションは燃える

「あああああっ」


胃の熱さは更に加速して全身から大量の汗が流れ出す。

熱さも胃だけに留まらず、胃を中心に身体の隅々が熱を帯びる。


「御門くん!?」

「ああああああああああっ」


燃えるような熱さにたまらず大きな声を出してしまうが、そこで俺は異変に気がついた。

声が普通に出る。

咳き込んで、さっきまでまともに出なかった声が出ている。

胸の痛みは、まだ確かにあるがその痛みも身体の熱さによりやわらいでいるように感じる。

初めてポーションを飲んだけど、ポーションってこんな感じなのか!?

思ってたのとは全く違うが、確実にその効果が現れている気がする。

これなら動ける。


「神楽坂さん、下がって」

「御門くん?」

「ふ〜ふ〜、多分大丈夫だから」


身体の熱を耐えるのがきついがそんな事は言ってられない。

身体を起こし、後方へと置いてきた破岩に向け足を動かす。

なんだ?

問題なく足が動く。

そして地面に落ちている破岩を拾い上げ、そのまま反転し巨大な拳骨へと向かい走る。

なんだ?

巨大な拳骨が俺の動きを捉えて高速で向かってくるが、右足に力を込めて斜め前方へと加速してそれを躱す。

なんだ?

躱すと同時に破岩を振りかぶり巨大な橈骨へと叩き込む。


「くっ、おおおおおあっ!」


胸が痛い。

その硬さに弾かれそうになるが、そのまま全身の力を込め破岩をねじ込む。

俺の力をのせた破岩が巨大な骨を砕く。

やっぱりおかしい。

身体の感覚がおかしい。

明らかに普段の感じとは違う。

足が動く。明らかにいつもよりも速い。

手が動く。先程一振りで肩で息をした破岩を捩じ込んだというのに、まだまだいける。

そしてこれほどの巨骨というのに弾かれずに砕く事ができてしまっている。

そのどれもが先程までの俺とは違う。

何が起こってるんだ?

いくつものレベルアップを繰り返したかのような感覚だが、レベルアップした形跡はない。

自分の身体の動きに違和感と疑問を覚えるが今はそれを考える時間はないし、これならいける。

額からは大量の汗が流れ落ちるが無視をして破岩を残った尺骨へと再び叩き込む。


「斬れろおおおおお!」


先程同様に硬い感覚に弾かれそうになるのを全身の力でねじ伏せ破岩の刃を骨へと進ませる。

抵抗感が消え破岩がふりきれる。

橈骨と尺骨を切断する事で巨大な拳骨は地へと落ちそのまま消え去った。

残るは巨大な上腕骨。

上腕骨だけとなった腕は、それでも俺へと向かってくるが先程までの勢いはない。

その動きをしっかりと見定め躱しながら破岩を叩き込む。


『ガッツ』


硬い。さっきと同じように力をのせてねじ込もうとするが通らない。

それに胸も痛いけどやれる。

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