第111話 2つ目の魔法陣

あれを倒せば本当に状況が好転するのか確信はないが今はできることをする以外にない。

みんなのおかげで、俺を妨げる敵はいない。

敵が何者であっても倒すしかないのは変わらない。

新たな敵が湧かないうちに倒す。

俺と敵との距離は10メートルを切った。

影光を持つ手に力を込める。


「ヴォオオオアアアアアヒイイイ」


ターゲットからこの世のものが発したとは思えないような声が響き渡る。

一瞬怯みかけるが、構わず敵に向かってそのまま走る。


「なっ……」


突然敵モンスターの前方に小型の魔法陣が現れ、後方の魔法陣同様に青白い光を放ち、そこから新たなモンスターが産み出された。

間違いない。

さっきの奇怪な声に反応して魔法陣が現れた。

スケルトンを産み出している魔法陣もこいつによるものか!

そうであるならやはりコイツを倒せば魔法陣も無くなる可能性が高い。

だけど、先に目の前に現れたモンスターを倒す必要がある。

新たな魔法陣から産み出されたモンスターはスケルトンではない。

吐き気を催す、強烈な腐臭を放つその姿には肉がついているが明らかに生きているというのとは違うのはわかる。

正確な種類まではわからないが、ゾンビやグールと呼ばれる類のモンスターであることだけははっきりしている。

こちらへと向かってくるが、その移動速度は速い。

よくあるゾンビがヨタヨタと歩くスピードではなく、人外のパワーを発揮して高速で迫ってくる。

俺は影光を高速で振るう。

タイミングよくモンスターの胴体を捉えるが、まるで気にする様子もなくそのまま迫ってくる。


「うあああああっ」


影光をすぐに引き抜き、後ろへと下がりながら再び振るう。

スケルトンとは全く戦い方が違う。

スケルトンは曲がりなりにも武器を使い、斬り合ってきたが、コイツは斬られることを全く厭わない。

痛覚というものがないのか、斬られても全く気にする素振りなくただ向かってくる。

その様は恐怖でしかない。

しかも腕が落ちたというのに痛がる素振りもなく、こちらへと向かってくる。

距離を取るために下がるが、この状況はまずい。

目的のモンスターからは離れ、しかも時間をくっているうちに二匹目のモンスターが産み出されようとしている。

スケルトンの無限ループから脱するためにここへと突撃したのに、このままじゃ完全な深みへとはまってしまう。


「早く消えろ! 消えてくれ!」


下がりながら影光で斬りつけるが、モンスターの勢いを止めることができない。

切羽詰まった俺は咄嗟に屈みモンスターの足を水平に斬りつけた。

硬質な骨の感覚が手に伝わってくるが、そのまま振り切ってモンスターの足を切断する。

当然のように足を無くしたモンスターは俺の方へと残った腕の力だけで地を這いながら迫ってくる。

リアルホラーだけど、とりあえずこれでモンスターのスピードは奪った。


お知らせ

諸事情により当面週2回更新になります

水、土の夜を目指しています。

よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る