第106話 岡島の事情

「やっぱりこれ渡しとくな」

「いいのか?」

「言っただろまだ十本以上あるんだよ」

「わかった.助かるよ」


岡島にも念のため予備の剣を渡し、探索を再開した。

歩いているとすぐにスケルトンの一団に遭遇し、岡島も少し手慣れて2匹のとどめをさす事に成功したが、残念ながらまだステータスは生えていない。

もしかして、スケルトンじゃダメなのか?

それともやっぱり岡島の問題か?

モデルケースが少なすぎて判断がつかない。


「これで3匹か……」

「もしかして岡島っちってネガティブくん? さっきやるって決めたばっかでしょ?」

「はい.もちろんです」


こうなったら時間の許す限り、岡島がステータス発現するまで徹底的に付き合うしかない。

それにしても、なんでゴブリンいないんだ?

スケルトンの比率が高すぎる。

なにもなければいいけど、こういう時って大抵良くない事が起きる気がする。


「ねぇ、岡島っちの妹ちゃんってどんな子? 妹ちゃんのために頑張るって決めたんでしょ」

「いや、妹だけのためってわけじゃないけど、妹は小さい頃に手術したのもあって身体がそんなに丈夫じゃないです。今でも学校は休みがちで母親も妹にかかってる事が多くて」

「そうなんだ」

「はい、だから俺がしっかりしないと。なにかあってからじゃ遅いし、お金もあるに越したことはないんです。多分普通の家よりお金かかってるから」

「へ〜岡島っち家族思いじゃない?」

「いえ、普通ですよ。本当ならもっと早くこうしてればよかった」

「やっぱり、人にはいろいろあるよね〜」

「いろいろはないですけど、父親も頑張ってるんで」

「じゃあ、絶対セイバーにならなきゃ」

「はい」


岡島に、そんな事情があったとは……。

やっぱり、このまま帰るわけにはいかない。

そう決意して進み、何度かスケルトンに遭遇し、岡島も更に何匹かのスケルトンを倒したがやはりステータスが発現することはなかった。


「御門くん、スケルトンばっかりだね」

「ああ、いくらなんでもおかしいよな」

「少し状況は違うけどこの前の3階層の時の雰囲気に近い気がする」

「まさか、1階層にもミノタウロスが!?」

「流石にそれはないと思うんだけど」

「そうだよ。あれは3階層だったからだし、何よりあの時はモンスター自体が出現しなかったからやっぱり違うよ」

「うん、そうだけど雰囲気というかなんとなく似てるような」


神楽坂さんの言っていることを否定しながらも、言わんとしていることは俺にも理解できている。

俺自身も違和感を感じているのだから。

だけどスケルトンは出現しているし明らかにあの時とは違う。

今回は飯綱もいないしそれに代わるものもない。

さすがに無いとは思うけど、この状況でミノタウロスが現れたらやり合う事は難しい。

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