第100話 岡島の初ダンジョン

入り口で簡単な手続きを終えて早速ダンジョンへと踏み入れる。


「これがダンジョン……」

「ああ、本当にゲームの世界に来たみたいだろ?」

「いや、映像で見たことあるからわかってはいたんだ。だけど実際に来てみるとな」


俺を先頭に神楽坂さんと岡島が並び最後尾に三上さんの並びで進んでいく。

あまり無いが後方から攻撃されるとまずいので岡島は真ん中だ。


「あ、神楽坂さんも戦ったりするんですか?」

「私は、回復役だから直接的に戦うことは少ないけど、ゴブリンやスケルトンくらいなら大丈夫だよ」

「そうなんですか」

「岡島くん、敬語じゃなくて大丈夫だから」

「あ、ああ、はい」


後方から岡島の声が聞こえてくるが、緊張からか、若干声が裏返っている気がする。

ただ、それが初めてダンジョンに踏み入れた事によるものなのかそれとも神楽坂さんと会話する事によるものなのかは判断し辛い。


「ギャ、ギャ、ギャ」


ダンジョンの奥からゴブリン特有の声が聞こえてくる。


「あ、あれってもしかしてゴブリンの声? って事はこの先にゴブリンがいるのか!?」

「岡島、気合い入れて集中しろよ! いくぞ!」

「お、おぅ!」


岡島の裏返った返事を背にしてゴブリンに向けてゆっくりと歩を進めて行く。


「ゴブリン5匹か」

「5匹!? そ、そんなにいるのか? 大丈夫なのか?」


情け無いようにも感じられる岡島の反応は何もおかしくはない。

ステータスが発現していない人にとって1匹でも脅威であるゴブリンが5匹いるという事は、その時点で絶望を意味する。

最近レベルが上がっておかげもあり感覚が麻痺してしまいそうになるが、モンスターとは元来そういうものだ。

俺は手にファイアブランドを携えゴブリンへと向かって行く。

今まで多用していた刀系の武器よりは明らかに重量感があるが、両手で持てば問題なく振れる。

1匹目のゴブリンに向け斬りつける


「ギャッ」


上段から肩口に向け剣を振ると肉を断つ感覚が手元に伝わってくるが、同時に発火した剣がゴブリンの傷口を焼き、強烈な肉を焼く匂いが周囲に立ち込める。


「ギィア……」


ゴブリンはその場へと倒れ消滅してしまった。

すぐに次のゴブリンが迫ってくるので、ファイアブランドを振るいゴブリンを退ける。

やはりファイアブランドが纏う炎は生物系のモンスターには絶大な効果を発揮してダメージを与えていく。

刃によるダメージに炎のダメージが加わり、ゴブリンはほぼ一太刀で消滅していく。

ただ、倒すたびに肉の焼ける強烈な臭いと黒い煙が舞い上がるのは難点だ。

5体を倒す頃にはあたり一面が煙でくもったような状態になってしまっていた。

この場所はまだ大丈夫だけど、密閉された空間でこれをやるとかなりまずい気がする。

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