第78話 SFP10を使ってみる

向日葵とダンジョンへやってきた。

2人で奥まで行くのは危険なので一階層でSPF10を試してみる事にする。

いきなりゴブリン相手に使う事も憚られるので、誰もいないオープンスペースで試してみる。


「カチッ」


テレビや映画で見たことのある形に近かったので、それほど取り扱いに戸惑うことはなかった。

両手でしっかり構えて恐る恐る引いてみる。


「あれ?」


トリガーを引く乾いた音だけがしてなにも起こる気配はない。


「お兄ちゃん、それ弾が入ってないんじゃない?」

「あ、ああそうか」


弾が入っているとばかり思っていたが、どうやら空だったようで弾を装填する必要があったらしい。

あぶなかった。ぶっつけ本番で使わなくて助かった。

俺は弾の入った箱から1発分だけ取り出してマガジンに装填してみた。

これで撃てるはずだ。

再び銃を両手で構えトリガーを引く。


「パア〜ン」


今度は破裂したような高い音と共に銃を支える手と腕にかなり強めの反動が伝わってきた。


「撃てた……」


レベルが上がっているので、問題にはならないがこれ、普通の人が撃ったら自分が怪我するんじゃないか?


「やっぱり本物なんだ」

「ああ、間違いなく本物だろうな」

「お兄ちゃん、セイバーって銃は大丈夫なの? 捕まったりしない?」

「銃刀法に縛られないってくらいだから大丈夫だろ。銃はあんまり想定してなさそうだけど」

「なら、いいんだけど、いきなりお兄ちゃんが逮捕されてテレビとかに出るのは嫌だからね」


ああ、やっぱり向日葵は優しいなぁ。お兄ちゃんのことを本当に心配してくれてるのがわかる。


「ワンピース、買いに行くんだからね」

「ああ、わかってる」


理由は聞かないでおこう。


「じゃあ次はこれを狙ってみる」


俺は家から持ってきた雑誌を地面に立てて的にした。

本当はもっと上の位置に置きたいが、流石に台までは用意してないので仕方がない。

再び弾を装填してから姿勢を低くして、しっかりと狙いを定めトリガーを引く。


「パア〜ン」


今度も問題なく発射されたようだが、立てた雑誌には一切変化が見られない。


「お兄ちゃん?」

「しっかり狙ったつもりだけど、掠りもしなかったみたいだ」


まあ、現実はそんなに甘くない。

いくらレベル10になったとはいえ、銃に触った事もなかった俺がいきなり当てれるなんて事はなかった。

俺が的に当てる事ができたのは、それから7射目のことだった。


「当たった。完全に貫通してるな」


結構分厚い雑誌にしっかりと穴が空いている。

これが通常のモンスターなら完全に一撃死だ。

やっぱり銃はヤバいな。

いわゆるチート武器だ。

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