第63話 1人じゃない
痛い。
背中が痛い。
二刀を支える手と腕が痛い。
肩と首も痛い。
「カハッ、くそっ」
痛いけど、このまま追撃を受けるとまずい。
身体の中でダメージの薄い脚を必死で動かして、立ち上がり態勢を立て直す。
「ウオっ!」
ガーゴイルが俺の隙を逃すはずもなく正面を向いた時には既に目の前で攻撃態勢に入ってしまっていた。
まずい。目の前の状況を脳で認識はできるがこのタイミングで身体を反応させる事ができない。
直撃する。
そう思った直後ガーゴイルに矢が刺さった。
「ガアアアッ!」
この矢は……
「御門くん、下がって!」
俺は神楽坂さんの声に従って数歩下がりガーゴイルと距離をとって再び刀を構えた。
「神楽坂さん、なんで……」
「私もセイバーだから、御門のサポートくらいはできるから」
「助かったよ」
神楽坂さんが助けてくれなきゃ、さっきので死んでたかもしれない。
神楽坂さんの放った矢はガーゴイルの肩口に刺さっている。
これでさっきよりはスピードも鈍るはず。
俺は再びガーゴイルへと踏み込み痛みを無視して全力で右手に持つ地刃利をはらう。
ガーゴイルがその硬い爪で地刃利を受け止めるが、俺は構わずに左手に持つ蝦蟇斬りをガーゴイルの腕に向かって振り下ろしそのまま斬った。
「お前もカエルみたいなもんだろ! 斬れろ〜!」
手元に抵抗感はあったが蝦蟇斬りを持つ手に力を込め斬り落とした。
「ギャアアアアアアア〜」
ガーゴイルの叫びが響き渡る。
痛みからガーゴイルの動きが完全に止まった。
俺は自由を取り戻した地刃利でガーゴイルの首を狙い落とす。
ガーゴイルの首が床に落ちると同時にモンスターは消滅した。
勝てた。
ギリギリ。
神楽坂さんの助けを借りてギリギリだけどどうにか倒せた。
レベル9でギリギリ。
前回勝てたのは本当に奇跡だったかもしれない。
一撃目を受けてしまったせいで身体が痛み悲鳴を上げてはいるが、まだだ。
他の2匹はまだ死んでない。
「わりぃ。ちょっと遅かったか」
「いや、1番いいとこだろ。真打ちは遅れて登場するってな」
俺が再び戦闘に加わろうとするタイミングで3年生のセイバー2人が来てくれた。
3年にもセイバーは4人いるが、受験生だからなのか4人揃ったところを見たことはない。
だけどこの状況では2人がきてくれたことはありがたい。
「いや、だけどガーゴイル!?」
「マジ? しかも2匹? 帰っていい?」
「いいわけねえだろ、くそ先が! ふざけてねえでさっさと手伝えよ!」
戦況に目をやると2年生チームはなんとか拮抗していたが、1年生チームはガーゴイルに完全に押されていた。
野本さんのスキルでどうにか留め置いてはいたが、決定打とはならず、ガーゴイルは周囲へと攻撃を繰り返していた。
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