第59話 セイバーエンジェル

地上では、モンスターによる被害が毎日のようにニュースに流れ、俺は日々ダンジョンに潜る生活を送っているが不思議なもので学校には普通に通っている。

来なくなった生徒もいるものの、学校では普通にテストもあり、唯一変わったのは運動場での活動が制限されたくらいだろう。

もちろん世の中の経済活動も継続していて、父親も普通に会社へと出勤を続けている。

今世界には日常と非日常が共存しているような不思議な状態が続いている。

てっきり全員で避難するような状況になるのかと思っていたが、実際にはそうはならなかった。


「御門、昨日セイバーエンジェル36出てただろ。あのパフォーマンス最高だな。見たか?」

「いや、見てないけど」

「やっぱセンターの芽瑠ちゃんが最高だよな。御門そう思うだろ」

「俺は、そんなに詳しくないから」

「え〜芽瑠ちゃんだぞ? 救世主アイドルだぞ? セイバーで可愛くてアイドルってもう最強だと思わないか?」

「いや、まあ、そうかもしれないけど」

「そうだろ? 俺も芽瑠ちゃんに救われて〜!」

「はは……」


いつの時代でもアイドルは不滅なのかもしれない。この時世にもかかわらず、商機を見出す人はいるもので、巷では救世主アイドルとしてセイバーばかりを集めたアイドルグループであるセイバーエンジェル36が大人気となっている。


「神楽坂さんもセイバーになったんだからオーディション受ければいいのに。絶対受かるって。メインのメンバーと比べても負けてないって。御門もそう思うだろ」

「まあ、神楽坂さんが可愛いのは認めるけど、あんまりアイドルとか興味ないんじゃないかなぁ。そんなに前に出たがる方じゃないし。どっちかっていうとそういうのは三上さんの方が向いてる気がするけど」

「あ〜三上さんはセイバーエンジェルよりセイバークライシス49の方だろ。有馬さん的なポジいけるかも」


セイバークライシスはセイバーエンジェルのお姉さんグループ的な立ち位置でメンバーも少し大人びた人達が多い印象があるが、詳しくない俺には顔と名前が全く一致しない。

いずれにしても岡島のハマりっぷりは相当なものがある。


「セイバークライシスも悪くはないけどやっぱりセイバーエンジェルが最高だよ。今度ドーム公演が決まったらしいけどチケット無理だよな〜。SRチケだよな。いやLRいくな」

「SRはわかるんだけどLRってなんだよ」

「LRはLRだ.レジェンドレア」

「レジェンドレア。なんかすごそうだな」

「ああ、レアの最上級みたいなもんだ」

「そうなのか」

「LR知らないのか。御門もダンジョンばっかり潜ってないでゲームとかアイドルとかにも興味持った方がいいぞ.こんな世の中だからこそだぞ」

「そうだな」

「まあ、神楽坂さんと三上さんと一緒の時点でご褒美みたいなもんかもしれないけども」


確かに岡島の言うことにも一理ある。

神楽坂さんと三上さんがいてくれることで殺伐としたダンジョンが華やいでいる。

もちろん向日葵がいてくれるのもかなり大きい。

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