第60話 スクールセイバーの日常

「避難警報、避難警報! 校内にモンスターが現れました。1年生棟です。スクールセイバーは至急向かってください」


3時間目の授業を受けている最中に校内放送が流れてきた。

以前はこんな放送は無く、モンスターの襲撃のたびに混乱に陥っていたが、頻発する状況に校内放送によるアナウンスが整備され、迅速にセイバーが対応する事ができるようになった。


「御門、行こう!」


クラスに4人となったセイバー全員で向かう。

すっかり寡黙になってしまった大前もしっかり一緒に1年棟へと走る。


「おう、御門、今日もやってやるぜ」

「ゴブリンだけなら一年だけで片付いて俺たちの出番は無いかもな」


途中で岸田も合流するが、最近は完全に名前呼びでフランクに話しかけてくる。

なにかにつけて話しかけてくるが、岸田が他の生徒と一緒に行動しているところを見た事はほとんどないので、偉そうにしているくせに何気にボッチなんじゃないかと思っている。

モンスターが侵入してきたのは一年生棟の一階。

渡り廊下を進んでいる途中でゴブリン特有の声が聞こえてきた。


「ギャギャギャギャ」

「次から次へと〜! 黒木! そっちに行ったぞ!」

『バーニングクロー』


既に1年のセイバーが交戦しているようだ。

1年は野本さんの他に2人のセイバーが誕生して今は3人となっている。

高校生のわりにそれほどセイバーが増えていないのには訳がある。

少し前までは一年生のセイバーは4人いた。

うちの学校でもモンスターを倒せばスキルホルダーになれる可能性が謳われたタイミングで4人目のセイバーが一般の生徒を引き連れモンスターに挑んだ。

ただスキルを持たない高校生が1人の高校生セイバーのサポートを受けてモンスターに挑む。

当然結果はやる前からわかっている。

誰か止められなかったのかと今になって思うが、当時は功名心が勝っていたのだろう。

悲劇ともいえる状況が生まれ、その後はピタリと無茶をする生徒はいなくなった。

その影響で、おそらく他の学校に比べてもうちの学校のスクールセイバーの数はそう多くはない。

それでも、それなりの頻度でモンスターの襲撃があるため、以前に比べると格段に手慣れてきているので、そこまで心配はしていない。


「ゴブリンか」


交戦しているのはゴブリンが5体。


『ゲルセニウムバイト』


「グギャヒャヒャ」


植物がゴブリンに巻き付きそのまま消失へと誘う。

野本さんのスキルだ。

以前助けてもらった時には気づかなかったが野本さんのスキルは植物で拘束するだけでは無く、毒によるダメージ付加があるらしく、ゴブリン程度であれば、そのまま倒してしまう事が可能らしい。


『ウインドブラスト』


寡黙になってしまった大前が無言のうちにゴブリンへとスキルを放つ。

ゴブリンはレベルアップにより威力を増した風の砲弾により撃ち抜かれた。

キャラ変が良いのかどうかはわからないが、以前の調子に乗っていた大前は消え、無言のうちに敵モンスターを倒したその姿は少しイケてる気がする。

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