第56話 子泣き爺
「結構第二層にも慣れてきた気がする」
「もう余裕じゃない?」
「4人だったら第三層でもいけそう」
「向日葵ちゃん、それはまだ無理じゃないかな」
「え〜そうかな〜。お兄ちゃんがもっと頑張れば結構いける気がするけど」
「向日葵、これでもお兄ちゃんは目一杯頑張ってるから」
「うん、御門くん頑張ってくれてるよね」
あ〜やっぱり神楽坂さんは癒しだ。
肉体労働は基本俺の役目なのでレベルが上がったとはいえダンジョンを進むのは結構疲れる。
癒しがあるのと無いのじゃ全然違う。
「御門、あれ」
三上さんの声に我に返って視線を移すと、前方に攻略組と思しき一団が見てとれた。
その数15名を超えている。
15名を超える一団がモンスターと交戦している。
今までも攻略組とすれ違う事はあったが戦闘の場に居合わせたのはこれが初めてだ。
モンスターを数で上回る集団は2人1組となり手数と物量で圧倒していく。
「凄いな」
これだけの人数が同時にスキルを発動する様は、俺たちの戦い方とは全く違うものに見える。
「おおおおおおっ、やるぜ! 『コカトリス』」
集団の1人が前方へと躍り出てスキルを発動した。
あれはまさか……
『コカトリス』というスキルを発動した男性は、予想に反し敵にダメージを一切与える事なくその場で一瞬にして石化してしまった。
石化して動かなくなった男性をモンスターが一斉に襲うが全くダメージはなさそうだ。
「嘘だろ、あれってまさかあの子泣き爺さん?」
「え? お兄ちゃん子泣き爺さんってなに?」
「いや、掲示板の……」
石化した男性がモンスターのターゲットを一身に集めたおかげで、残りのメンバーはプレッシャーから解放されモンスターの群れを一気に殲滅してしまった。
「凄かったな」
「あの石になった人大丈夫なのかな」
「いや、どうだろう」
モンスターが消えても子泣き爺さんらしき人は石化から戻る様子はないが、他のメンバーたちにも焦った様子は見られない。
衝撃的な状況に俺たち4人は子泣き爺さんを注視していると、突然子泣き爺さんの石化が解けた。
「ふ〜やっぱり俺の防御を貫けるもの無しだ」
「ああ、山下いい仕事してたぜ」
「そうだろう」
「ところでレベルは上がったのか?」
「いや、上がらなかった」
「そうか、それは残念だ。やっぱり石化状態だと難しいのかもな」
「まあレベル1のままでも防御力は最強だから」
「そうだな」
あの人が本当に掲示板にいた子泣き爺さんかどうかはわからないが、どうやら自分が石化するスキルの使い道を見つけたみたいだ。
確かにあれだけ敵を引きつけてくれる人がいれば、戦いやすい。
目から鱗とはこの事かもしれない。
俺たちも、もっとスキルを上手く使いこなせればもっと強くなれるかもしれないと思わされる出来事だった。
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