第50話 ダンジョンのゴブリン
「みんな静かに。なにか音が聞こえる」
まだかなり距離があるように思えるが確かに聞こえる。
「ギ……ギ……」
明らかに人間ではない何かの生き物が発している声だ。
俺は、みんなに目配せして隊列を整え直し、風切り丸を構え音を殺して前方へと進んでいくと、ゴブリンの姿が見えた。
その数は5。
本当は1〜2匹程度を相手にしたかったが、都合よく選ぶ事は出来ないのでそのまま戦闘に入る。
ゴブリン達はこちらを認識すると一斉に向かってくる。
俺達もすぐに応戦するべく走り出す。
目の前にゴブリン5匹が迫ってくるが、当然俺1人で相手取る事はできない。
『グラビティ』
向日葵の声と共に先頭にいたゴブリンの足が止まり、後方からボウガンの矢が飛んでくる。
俺は2匹目のゴブリンと近接するが、風切り丸を振るい、袈裟懸けにゴブリンを切り伏せる。
『アイスフィスト』
三上さんのスキルで3匹目の頭部が弾け飛び、俺はすぐに4匹目に向かい斬り結ぶ。
『アイアンストライク』
5匹目は向日葵の放った鉄球が押し潰し、俺はゴブリンに斬撃を浴びせ倒し切る。
おそらく時間にして10秒をわずかに超える程度の交戦時間。
こちらに被害は一切出ていないので、完勝と言っていい内容だ。
「うまく倒せてよかったね。お兄ちゃん」
「初めてだから、緊張した〜」
「どうにか当てれてよかった」
初めてのダンジョンでの戦闘を無傷で終え、更に奥へと進んでいくとすぐに次のゴブリンの集団に出くわした。
初めてなのでよくわからないが、ダンジョンとはこれほどまでにモンスターの密度が濃いのだろうか。
今度のゴブリンは全部で9匹もの数だ。
だけどまだ探索は始まったばかりなので、ここで逃げ帰るわけにはいかない。
「9匹をいっぺんに相手は出来ない。出来るだけ遠くから数を減らしてから戦うしかない」
「まかせてよ。お兄ちゃん」
俺以外は遠距離の攻撃手段を持っているので、俺はいつでも交戦できるよう武器を構えて警戒する。
向日葵と三上さんが同時にスキルを発動させゴブリンを倒し、こちらに向かってきたゴブリンに対し神楽坂さんがボウガンの矢を放つ。
俺はみんなが襲われないよう風切り丸を構え少し前に立ってゴブリンの攻撃に備える。
向かってきたゴブリンに剣を振るいダメージを与え、そのまま次のゴブリンに切りかかる。
「やあああっ!」
『風切り丸』はその剣速に比例して斬れ味鋭く、ゴブリンの肉を容易く裂き、骨をも断った。
複数に囲まれないように一対一の状況を作り、一気にけりをつけていく。
何度か複数のゴブリンが襲って来ようとしたところを、他の3人がうまくサポートしてくれたので、特に危険な場面もなく倒し切る事ができた。
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