第43話 第二波

ゴブリンの襲撃からもう少しで3時間が経過しようとしている。

この3時間の間に戦いで目減りしていた体力は回復したので、身体の重さは取れた。


「おおい! 来てる! 来てるぞ!」


その声は突然だった。

もちろんそれはゴブリンがこちらに近づいている事を知らせる声だ。


「どのくらいだ!」

「ここから見えるのは……20」


20匹くらいならなんとかなるか。館内に再び緊張が走る。

俺からも近づいて来るゴブリンが見えるが、モールの側面に来ると二手にわかれ、一方が補強した部分、もう一方は違う扉にの方へと行くのがわかった。


『ガン、ガン』


机を立てかけ補強しただけなので、強度は望むべくもなくゴブリンが叩く度に揺れて、隙間が広がっている。

もう一方はまだ、扉までも距離があるので、先にこちら側が突破されるのは間違いないが、2箇所から同時に攻められたら対応できる戦力がない。

スキルホルダーとは言っても、ほとんどの人は集団戦の経験なんか無いはずなので、どうするのが良いのか適切な判断を共有するのは難しい。

ゴブリンの攻撃で机が壊れ、ゴブリンが踏み込もうと積んである椅子を蹴り飛ばす。

俺はフロアへと雪崩れ込んできたゴブリンの1匹に狙いを定めて対峙する。


「ググギャ」


視線が交錯した瞬間ゴブリンが飛びかかってきたので、後方へと避けゴブリンの首を刎ねる。

レベルアップした事により、ゴブリンの動きにも少し余裕を持って対応できている。

すぐに次のゴブリンが現れたので、剣で手傷を負わせ動きを止める。


「三上さん! 今だ!」

「わかってる」


三上さんが放ったボウガンの1射目はハズレ続けて撃った2射目がゴブリンの胸部を捉え、そのまま消滅した。

手を休める暇なく俺は三体目の相手をし、先ほどと同じように三上さんがとどめをさす。


「御門、スマホにステータスが!」


後方で三上さんの声が聞こえる。

どうやら二体目のゴブリンにとどめをさした事でステータスが発現したらしい。


「三上さんもし使えるならスキルを! とどめは神楽坂さんに!」


手短に指示を与えて、すぐさまゴブリンと交戦に入る。

周囲はどうにかゴブリンをとどめてはいるが、スキルを使い果たし前衛に立っている人達はかなり押されている。


「やばいぞ! 奥の扉も破られた! 奥からも来るぞ!」


ゴブリンが分かれた時点で想定は出来たことだが、思っていたよりも早い。

それに両方を相手にするには数が多すぎる。

俺の目の前にも既に2匹のゴブリンが迫ってきているので、2本の剣を構え近い方のゴブリンを斬りつけるが、手に持つ棍棒で防がれてしまった。


「くっ」


今のステータスなら押し負ける事はないが、どうしても一瞬動きが止まってしまう。


「御門くん!」


動きを止めた俺を狙って踏み込んできたもう1匹のゴブリンをボウガンの矢が縫い止める。


「ガアアッ!」


力比べを避け、手負いとなったゴブリンにターゲットを変え連続で斬りつける。

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