第44話 追い詰められる

「くっそ〜またふえてる。キリが無い! こっちはもういっぱいいっぱいなんだよ!」


戦っているメンバーから声が上がるが、正面の扉から迫るゴブリンの後方からは新たなゴブリンの一団が押し寄せてこようとしている。

ゴブリンにとどめをさした剣を、横に振るい、棍棒を持ったゴブリンにダメージを与える。


「御門くん、避けて!」


神楽坂さんの声で、左に大きく避ける。

間髪をいれずにボウガンの矢が飛んできてゴブリンに突き刺さった。

神楽坂さんのフォローのおかげでどうにか複数のゴブリンを一度に相手取る事ができてはいるが、戦闘が未熟な俺ではステータスが上がってもかなりギリギリの戦いとなってしまっている。

ひと息つく間もなく次のゴブリンへとあたるが、既に奥から入ってきたゴブリンがこちらの側面へと迫っているので俺も必死で身体と腕を動かすが、1匹、一太刀毎に消耗していくのがわかる。


「きたぞ〜!」


側面から一気に10匹程度のゴブリンが襲いかかってくる。


『アイスフィスト』


後方からは三上さんの声が聴こえてくる。

焦りを感じて、必死に剣を振るうが、手元がぶれ、俺の剣はゴブリンの首ではなく頭部に命中し途中で止まりそれ以上動かせなくなってしまった。

右手に持つ剣を手放し、最後の一本を喚び出す。


『風切り丸』


初めてで唯一のRガチャの景品が手元に現れる。

それは所謂日本刀だが持っただけでは何がレア足り得るのかわからなかったが、ゴブリンに向け振るった瞬間に理解できた。


『ヒュッ』


風切り音をたて走った刃がゴブリンを切断する。

その刃は格段に軽く、そして鋭い。

今まで斬る度に重い抵抗が手元に伝わってきていたのがまるで包丁で刺身を切るかの如く、あっさりとゴブリンの肉と骨を断ち切った。

その斬れ味に驚きつつ、俺は動きを加速させゴブリンに斬ってかかる。

まるで自分の技量が上がったかのような錯覚を覚えるが、とにかく腕に持つ武器を振るう。

風切り丸の恩恵もあり、どうにか崩れずに持ち堪えているが、それも長くは続かなかった。

押し返したはずの側面から更なるゴブリンが押し寄せ、何人かの人がその波に飲み込まれ、そのまま押し切られるように俺達も限界を迎えた。

もうダメか……

腕が重い。

軽く感じたはずの風切り丸が重い。

ゴブリンの圧力に抗う事ができない。


「うおおおおおおお〜!」


後方から新田さんやモールのスタッフらしき人達が武器を手に突っ込んできてくれ、交代するように俺達は後ろへと下がった。


「ここをやられたら後はない! みんな! 私たちのモールを護るぞ!」


新田さんが指揮してゴブリンを上回る数の人達が波を押し返していくが、スタッフの人達が1人また1人と倒されていく。

くそっ! このままじゃ!


「御門くん、効くかどうかわからないけど試してみるね」

「なにを……」

『ヒーリング』

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