第40話 向日葵

これで4匹目。

だけどまだまだ減った気はしない。

どうやら、更にここに集まってきてしまっているようだ。


「ガアッ」


また1人ゴブリンにやられてしまった。

恐らく俺のレベル4という数字は決して低くないと思う。

大前や岸田がようやくレベル2になった事を考えると、ここにいる人達もそれに近い可能性がある。

初期ステータスにもよるが、感覚的にはレベル2でどうにかゴブリンとやりあえるレベル。

ペアを組んでもらっているのでその分補正はあると思うが、連戦はかなりキツイ。

そんな中既にスキルホルダー3人とそれ以外の人4人が倒れてしまった。

俺も手には予備でストックしていた剣も出し二刀で立ち回っている。

これ以上、戦う人が減るとヤバい。

既に2対1の数的優位は瓦解してしまっている。


『グラビティ』


後方から向日葵の声が聞こえてきて、俺の相手のゴブリンの動きが止まったのがわかる。


「おおおおあああ〜!」


俺は必死に身体を動かして目の前のゴブリンに剣を叩き込む。


「向日葵、なんで」

「お兄ちゃん、私も戦う。剣は無理だけど、スキルで戦う。だってお兄ちゃんより強いんだから」


妹にこう言わしてしまう、自分が情けないが今は向日葵のフォローが助かる。


「お兄ちゃん、次だよ」

「わかってる」


向日葵が『グラビティ』で動きを止めたゴブリンを順番に撃破していく。

それを何度か続けたあと、向日葵は鉄球での直接攻撃にシフトし、余裕のできた俺は他の人のフォローに入り、どうにかゴブリンの群れの侵入を防ぐ事ができている。

ただ、何人かの動きは目に見えて鈍くなっているので限界が近い。

逆に動きが良くなっているように思える人もいるので、もしかしたらこのタイミングでレベルアップしたのかもしれない。

いずれにしても、ゴブリンの数は目に見えて減ってきた。

あと10匹くらいだろう。

1匹が俺に向かって来るが、俺のところにくる手前で動きを止める。

これは向日葵の『グラビティ』

さっきまでの戦いで、使い切っていたはずなので、向日葵もレベルアップしたのだろう。

この場面でのレベルアップは有り難い。

動きを止めたゴブリンを難なく倒し、次のゴブリンを待ち受けるが、向日葵のサポートが大きく被害者を増やす事なくどうにか全てのゴブリンを倒すことに成功した。

そして最後のゴブリンを倒したタイミングで俺の体力が少し回復したのを感じる。

どうやらここで俺自身もレベルアップしたらしいが、それよりも問題なのはゴブリンに倒された7人だ。

7人の遺体は共に大きく損傷しており、初めて遺体を見る俺自身もどうしていいのかわからない。


「みなさん、このままでは血の匂いにゴブリンが寄って来る可能性もあります。とりあえず、シートで包んで端まで運びましょう」


新田さんの指示で、待機組の中にいた医療関係者の人達が無言で作業を進めていく。


「動ける人で急いでここを塞ぎましょう」


またいつゴブリンが襲って来るかもわからないので、急いで応急処置をする。

これも新田さんの指示で、ホールから会議用の机を運び立てかけ、内側に大量の椅子を重ねて重しにし、可能な限り養生テープで貼り付けた、あくまでも応急処置なので強度に不安はあるが、今はこれで耐え切るしかない。

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