第38話 戦闘

『ドン』


ガラスが叩かれる音がするたびに俺の心臓も同じく激しく鼓動する。

何度か叩いた後、叩いても割れないのがわかったのか、ゴブリンはその場から離れ去っていく。

助かった……

そう思ったのも束の間だった。

さっきのと同じやつかはわからないが、十匹近くのゴブリンを引き連れ戻ってきてしまった。

今度は、複数のゴブリンがガラスを叩き始めたが、一体のゴブリンが体当たりした瞬間、ガラスに大きな亀裂が入ったのが見えた。


「お、おい! 持たないぞ。くそっ、やるしかない。戦えるやつは一階だ! 一階で迎え討つぞ!」


セイバーのうちの1人が声を上げ、それをきっかけに各フロアに配置されていたスキルホルダー達が一斉に一階へと向かう。

俺も覚悟を決めゴブリンのところへと走り出す。

例えガラスを破られたとしても入り口はその1箇所だけだ。一気に押し寄せて来る事はない。

それに今いるのは十匹程度だ。こっちの戦闘員の方が数は多い。

大丈夫だ。いける。

そう自分に言い聞かせて、走るがバスタードソードを握る手に力が入る。

外から俺達の姿を確認したゴブリンはさらに激しく体当たりをかまし、ついには亀裂が広がりガラス面は完全に砕けてしまった。


「ちくしょ〜! やってやるよ。 『ニードルショット』」


最初に侵入してきたゴブリンに対して、セイバーの1人がスキルを放つ。

鋼鉄の針がゴブリンの頭を貫きその場に倒れる。

それを合図にゴブリンが次々と入り込んでこようとするが、スキルホルダーの人達がスキルを発動し、直接的な交戦を迎える事なく全てのゴブリンを排除する事に成功した。


「おおおおお〜! やった。ゴブリンなんか目じゃないな。たいした事ないんじゃないのか」


戦闘が終わったのを見て、3階で隠れていた人が声を上げるが、俺の感想は真逆だ。

多分、さっき声を上げた人達はスキルのことをよくわかってない。

スキルには回数制限がある。

よほどレベルが高くない限りその回数は多くはない。

銃の弾と同じで弾が切れてしまえば銃は使えない。

スキルホルダーのみんなはそれがわかっているので、ゴブリンを退けても表情は明るくない。


「使い切った人はいますか?」


俺は集まっているスキルホルダー達に声をかける。


「俺はもうだめだ」

「わたしもです」

「俺は後1回だ」


やはり状況は厳しい。


「お二人は剣でサポートをお願いします」

「わかった」

「それとこのままにはできません。少しでも入りこめないよう棚とかでバリケードを作りましょう」

「ああ、そうだな」

「ちょっと待ってくれ」

「どうかしましたか」

「あれを見ろ、どうやらバリケードを作っている時間はなさそうだぞ」


そう言われて外に目を向けると、仲間の声や血の匂いに反応するのかこちらに向けて、更なるゴブリンが集まって来ているのが見えた。

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