第37話 籠城3

いくつか決まったのは、外から人がいるのが見えないように1、2階の壁側には近づかない事。

そして、スキルホルダーが決められた場所で待機する事。

スキルホルダー以外で戦えそうな人を募り、武器を携帯していない人には日用品コーナー等で包丁やノコギリを手にしてもらい、それ以外の人にも念のため工具や武器になりそうなものを手にしてもらう。

俺もスマホに死蔵してあった武器を自分のを除き全部出して、スキルホルダーの人を中心に配った。

俺はバスタードソードを手にして念のために一本はスマホの中から出さずに残してある。

ボウガンは三上さんに渡しておいた。

最悪、向日葵のスキルと三上さんに渡したボウガンがあれば3人はどうにかなるという俺の判断だが、俺のスキルで出した武器なので、誰からも文句を言われる事はなかった。


3階の窓側から、交代で状況を確認しながら中の人たちは中央のホールに腰を下ろして助けを待つ。

新田さんの指示で全員に飲み物が配られ今のところ落ち着いてはいるが、外の状況は凄惨を極めた。

外にいたスキルホルダーや武器を携帯していた人達の力で、少なくないゴブリンを倒したのだとは思うが、それ以上の数を擁したゴブリンは数の暴力で抗う人全員を飲み込んだ。

ゴブリンは基本素手か棍棒程度しか手にしていないがあの怪力で殴られればタダで済むはずはなく次々に倒されていき、途中からは車までたどり着いた人達が強引に逃げようとした結果追突事故を頻発させ出られなくなった人達も格好の餌食となってしまった。

中には逃げ切れた人もそれなりにいたように見えるので、どうにか外にここの状況を伝えてくれるのを願うだけだ。

緊張で時間の経過が遅く感じてしまう。

もう数時間が経過したような感覚だが時間を確認するとまだ1時間が経過しただけ。


「ふ〜っ」


神経がすり減っていく。

幸いにも今のところモールへのモンスターの侵入は無いが、助けが来る様子もない。

そして相変わらず電話とネットはまともに繋がらないので、情報源は電気店のテレビのみだが、全国で同様の状況が発生しているらしく、今も定点カメラから街をうろつくゴブリンの姿が映し出されている。

よく時間だけが過ぎていくなんて言ったりするが、今は時間すらも過ぎて行ってはくれない。


「ふぇ〜ん、ふぇ〜ん、ふぇ〜ん」

「おぎゃ〜、おぎゃ〜、おぎゃ〜」

「おい! 黙らせろ! 外に聞こえたらどうするんだ!」

「すいません、すいません」


1人が泣くと釣られたように他の赤ちゃんや子供も泣き出してしまい、周囲の大人が注意をするが収集がつかない。

みんな緊張感からピリピリしているのを感じる。


「おいっ!」


その時3階の壁側で見張りをしていた男性が声を上げ、緊張が走る。

移動して確認するとガラス越しの向こう側に数体のゴブリンがうろついているのが見える。

戦う準備のある人以外は3階フロアに集まっているので1階からはこちらの状況は見えないはずだが、中を窺っているのかなかなか去ろうとしない。


『ドン、ドン、ドン』


「グギャ、ギャ」


ゴブリンが声を上げながらガラスを叩く音が聞こえて来る。



あとがき

いくつかコメントをいただいていましたが、昨日ようやく作者の手のひらの抜糸が終わりました。

まだ痛みはありますがうまくくっつきました。ただ怪我で大幅に生命線がのびました。

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