第31話セイバーカード
話の流れで思わずストレージと言ってしまった。特に嘘をつく必要も無かったが、あの流れで実は『ガチャ』ですとは言い出せなかった。
条件がスキルを保持している事なのでそこに嘘は無いし、ある意味広義ではストレージ機能も無いわけではない。
だけど、周りの状況に流されるきらいがあるのは俺の悪い癖だ。
セイバーになったのを機にあらためていきたい。
しばらく待っていると係の人がやってきて学生証のようなセイバー登録証を持ってきてくれた。
こんなのがあるとは知らなかった。
「これが身分証明になりますので常時携帯をお願いします。特に武器の携帯使用の場合、警察に確認される場合があるので必ず提示してください」
「わかりました」
その後、指定の銀行口座を作らされて、セイバーとしての説明を一通り受けた。
本当に月100万円くれるようだし、家も希望があればそれなりのところを用意してくれるらしい。
ただ、セイバーの地位を悪用したり、モンスターから逃げるような事が続けば剥奪される事もあるとの事だった。
そしてもうひとつ。
セイバーになった事でダンジョンへの入場する資格が発生した。
イレギュラーで地上で発生するモンスターもいるが、その多くはダンジョンで生まれるそうだ。
そして、ダンジョンからモンスターが溢れないようにするのもセイバーの役目のひとつだそうで、年に5回は必ずダンジョンに一定時間潜る義務が発生するとのことだった。
稀にイレギュラー対応を求められる事があるようだが、ある意味軍隊の予備役みたいなものだろうか。
たまに呼ばれてダンジョンのモンスターを倒すのが仕事か。
昨日見た掲示板の人はこれもあってダンジョンに潜っていたのかもしれない。
まあこれだけ高待遇だからみんな文句も言えないだろうけど、ひとつ気になったのは、基本全ては自己責任。怪我に備えて保険に入るのも自分でだし、怪我や命の補償は一切ないとのことだった。
これを聞いてやっぱり向日葵はセイバーにはさせられないと強く思ったが、だから100万円もくれるのかと妙に納得はできた。
そしてもうひとつ大きいのはここでドロップ品を買い取ってもらえるとのことだった。
値段表とかはないので、持ってきてみないと値段はわからないとのことだった。また今度魔石を持ってきてみようと思う。あれが売れれば俺のお小遣いとしては十分すぎる。
こうして晴れてセイバーとなる事ができたがセイバーになったからといって、今までと何も変わらない。
銃刀法を超えて武器の携帯が認められるとはいえ、普段から腰にバスターソードやロングソードを下げるわけにもいかない。
ごく稀にそういう人を見かけるが、世間の目は結構厳しい気がするのでやめておこうと思う。
だけど、そんな武器を手に戦っている自分を想像するとちょっとだけ胸が高鳴り熱くなる気がするが、中二病患者でもなく英雄願望もない俺には縁のない話だな。
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