第30話 ストレージ

結局父親も賛成してくれ俺がセイバーになる事は了承されたがひとつ問題もあった。

俺がセイバーになる事を知った向日葵が、


「お兄ちゃんだけずるい。お兄ちゃんがなるなら私もセイバーになる」

「ダメ!」

「だってお兄ちゃんより私の方が強いんだよ?」

「それは……そういう問題じゃない」

「え〜っ、納得いかない」

「ダメなものはダメ」


結局向日葵にもお小遣いを月に2万円という事でどうにか納得してもらった。

母親が向日葵の月100万円という言葉に一瞬揺らいだように見えた時には焦ったが、流石にそこまで守銭奴ではなかったようで事なきを得た。


そして俺は4回となった『ガチャ』を今日も引いてみたが、多分景品もグレードアップしている。

今日の景品は、薬草、霜降り牛肉350g 、ボウガン、鉄の小手 だった。

今まで出た事のないものばかりだ。

この中で1番テンションが上がったのは霜降り牛肉350gだ。

母親も今日はしゃぶしゃぶだと小躍りしていた。

少しわがままを言わせてもらうと4人家族で350gは少し物足りない。せめて500gは欲しかった。

そして薬草。

スマホをタップすると普通に草の束が現れた。

いったい何の草なのか全く見当もつかないが、これをどうすればいいのかもわからない。

おひたしにして食べれば何かが起こるのか?

いや薬草っていうくらいだから傷やHPが回復するのかもしれないが、今は怪我も癒えているので試しようがない。

ボウガンは少し小ぶりだが今まで飛び道具が出た事はなかったのである意味革新的だ。

鉄の小手については重いだけで正直使い道がない。

とにかく今までにない景品ばかりなので、グレードアップは間違い無いだろう。


翌日母親のススメで学校を休んでセイバーになりにきた。

オフィスビルの一角にセイバーを管理する国防セイバー管理組合というお堅い名前の事務所があり、そこに来ている。

セイバーの制度自体が新しいので、事務所も新しいのだが思っていたよりもずっとコンパクトで職員の人もそんなに多くはないようだ。

受付でセイバー希望の旨を伝えて、書類に記入。学生証のコピーを取られてから、奥に連れて行かれる。

事務所はコンパクトだが事務所の奥はなぜかシェルターのようになっていてかなり広い。


「では、スキルを実演していただけますか?」

「え? スキルの実演ですか?」

「はい、実際にスキルを確認できませんと、セイバーとして登録はできませんので」


確かに騙りでセイバーになれてしまえば大変な事になってしまうのでスキルの確認は必須だろう。

ただ、ここで問題が発生してしまった。

俺は既に今日の朝『ガチャ』を4回とも引いてしまっている。

まずい……


「どうかされましたか?」


一瞬係の人の表情が険しくなった気がする。

冷や汗が流れてくるが、ここで俺はある事を思いついてしまった。

『ガチャ』は引けないけど、ストックした景品なら呼び出せる。


俺は慌ててスマホのリストから短刀をタップし出現させる。


「ほう、ストレージ系のスキルですか。珍しいですね」

「そ、そうですか? 珍しいですか?」

「はい、攻撃系のスキルに比べると出現率は低いようですね。回数は一度だけでしょうか?」

「いやまだいけます」


そう言って俺はもう一本剣を取り出す。


「わかりました。ありがとうございます。それではスキル名を登録しますのでお聞きしてよろしいですか?」

「……ストレージで」

「ストレージですね。わかりました。それではセイバーの登録証をお作りしますのでしばらくお待ちください」

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