3-5 エアーキャプチャー
無事離陸し、自由に動いていいようになるとモネが説明を始める。
「発見した生物というのがだね、空気でできてるんだ」
「どういうことです」
「そのままの意味。普通液体とか固体とかでしょう。それが気体なの」
「ですので、そもそも生物かどうかも不明ではあります。明らかに意思を持つような動きをしていたので生物としていますが」
エレンが捕捉を付け加えながら話は進む。
「高度40kmから50kmの上空にいたそれらは時々動き出すが基本的に静止している。そこを狙って捕獲する」
「構成要素が気体であるために密閉できるものが必要という訳ですか」
「気体の性質も現時点では不明ですが無色透明であることは確実です。なので目視での確認もできません。一応写真を渡しますが、これは計測情報を元に他の画像を加工したものですのでご注意ください」
レイノルズとアデルは渡された写真を見る。
渡された写真は大気圏の高高度のどこかを撮影した写真のようだったが、明らかに不自然なものが中央に貼り付けられていた。
丸い角の四角い生け垣のような形の土台から太い幹が一本まっすぐに伸びている。その先端には、葉や枝はではなく膨らんだ実のようなものが一つだけ天を向いている。
植物のように見えるその風体は基本的に静止しているという性質を納得させるものだった。
「これが…?」
「はい、空気とは成分の異なる気体がその形を崩すことなく集まっている…。表現としてはこんなところかと」
「あのコンテナは輸送用も兼ねている。研究施設に運んだらそこで本格的な調査を始めるつもりだ。できれば天然自然の様子を観察したいがどうにも位置が悪い。それに…、音との関連についても知りたいからな」
「そちらも対策を?」
「一応機内の大半は防音仕様にしてある。コンテナと機体外部にノイズキャンセリング機能もつけている。それでも気になるならあそこのヘッドホンをつけてくれ」
そういって椅子の上に置いてあるプラスチックの箱を指す。
「サード・ノアと音の関係性についてはある程度目星はついているが…、この場で断言するのは止めておこう」
ひとしきり解説が済むと、モネはコックピットを覗きにいき、エレンは捕獲活動の打ち合わせを他の搭乗員と始めた。
アデルは渡された写真を凝視している。
どんな存在か考察を進めているのだろう。
レイノルズは近くの窓を下の方から見上げる。
普段何気なく見上げていた空にそんなものがいるとはにわかには信じられなかった。
数分後、機体の振動の調子が変わり、レイノルズが何事かと思っているとひょっこりとモネが現われ、ジェットエンジンからロケットエンジンに切り替わったと教えてくれた。
「これがあるからのんびりと作業は出来ないんだよねぇ」
窓の外を見るとカーブした地表が見える。
相当の高度に来たことを示している。
とはいえ、この高度でもまだ宇宙とは到底呼べないが。
さらに数分の時が経ち、捕獲準備に入ったと知らせが入る。
船内の緊張が高まるが、実際の活動は地味なもので船外活動すらなく、船外の捕獲機構を数人が機内から慎重に動かすだけだ。
レイノルズとアデルも邪魔にならぬよう固唾を呑んで見守る。
何かで対象の位置を測っているのだろう。
閉じられる位置を微調整しながらアームが動かされる。
白いコンテナが取り付けられたアームが閉じるだけであったが、時間が経つのが遅く感じられた。
作業をしていた一人が振り向き成功を告げると、少しばかりの確認作業を済ませ、感慨に浸る間もなく機体はすぐさま帰路に向かう。
レイノルズは閉じたコンテナの中にあるというカメラを見せてもらったが、空っぽのように見えるだけだった。
地上に降り立ち、コンテナがアームから取り外され輸送されていくのを尻目に足で地面を吹く感覚を、数時間ぶりであるが懐かしく感じていた。
後日、捕獲対象が収められた場所を知らせる案内が本部に届いた。
生態の調査結果も共有するとのことであったため、彼は主要なメンバーと共に向かうことにした。
Mysterial 秋ノ夜長 @AkiYoru
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