感覚位相幻体
少女の精神の中で一体の第二原種は思う。
自分たちが死ぬのは取り憑いた生物が死亡し、あらゆる感覚を感じられなくなるときである。
だからこそ、取り憑いた生物の生命活動を可能な限り延長させ、死期を悟れば次の憑依先を探す。
地上の生物を死滅させるなどもってのほかだ。
だが、今外で暴れている奴は何らか外法によって憑依先を必要としない存在となった。
だからこそ、こんな行為をまかり通せる。
宿主を一人残らず殺すことができる。
では、奴は一体何を以て死ぬのだろうか。
自分が思いついたことは既に外の人間に伝えた。
宿主がいらない浮遊霊を、観測によってこちらに都合良く定義するという手法。
宿主の目を通して確かに効果は感じられた。
だがあれでいいのか。
その疑問は消えない。
地上の全生物が死ねば、観測者を失ったあいつも消えるだろう。
対策としては論外であるが。
要は観測者だ。
自分がどう見られているか。
それを自覚し、時に強制させる生命。
それが自分たち。
相手は憑依を捨て一つの生命に縛られること無く全ての生物と感覚の相互作用を得た存在。
その存在強度は今宿主が死ねば諸共消える自分の比では無い。
要点が見えてきた。
観測者がどう見るか。
観測者にどう見せるか。
重要なのはその2つ。
自分が先に提案したのは前者によるもの。
その最前線に宿主たる少女がいる。
奴は今、自分の容姿と脳が機能停止するほどの幸福感情の2種類を垂れ流している。
宿主の少女はその内の視覚、厳密には観測者の触覚に割り込み、奴の肉体を傷つけている。
受けている電波を人間という受信者に届く前にこちらの都合の良いように改竄している訳だ。
だが足りない。
少女の能力も相まって改竄できる程度が知れている。
であれば後者はどうか。
奴の垂れ流している方。
視覚と幸福感情に干渉する。
干渉するならばどちらがよいか。
………………
しばらくの時をおいて、その意識を浮上させる。
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