3.退院

真っ白な天井。消毒液の匂い。

ああ、そうだった病院だった。

身体は、もう動く。

でも、心がまだ。

「間宮 宗吾さん。お目覚めですね」

白衣の男性が、ベッド右側に立っていた。

どうやら、医師のようだ。

「午前に検査をして、問題なければお帰りいただけますよ」

そう医師は告げると病室を出て行った。

俺は、生かされてしまった。

生きないといけないんだな。

俺は、自分から命を絶つことはできないんだろうな。

きっと、愛華くんに止められるのだろう。

俺は、いつの間にか彼女の事が気になっている。

心に空いた隙間に愛華くんがいるような不思議な感覚がある。

これが、恋ではないとは思う・・・たぶん。

もう、恋という感情は離婚したあの時に忘れてしまった。

俺には、前ほどの感情はなくなっているのかもしれない。

あの日、俺の心は一度バラバラになってしまったんだと思う。

いろんな欠片が散らばって無くなっている気がする。

だから、隙間に愛華くんが入り込んだのだろうか。


その後、俺は検査をし午後には退院することになった。

まあ、結果としては栄養失調だった。

飲まず食わずで1週間もいればそりゃあなるよな。

他には、目立った病気はないようだ。

俺は、手続きをして病院を出る。

「せんぱ~い!」

愛華くんが、ロビーにいた。

彼女は、俺の元まで駆け寄ってくる。

「えへへ、来ちゃいました」

「愛華くん、どうして?」

「え、午後は直帰外回りだったので来ちゃいました」

愛華くんはいつも着ているスーツを着ていた。

確かに仕事帰り?だな。

「先輩、行きますよ。私、車なので送ってきます」

俺は、そのあと愛華くんに自宅まで送ってもらった。

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