第19話 魔女の名は騒動の元(4)
お仕置きでは無くてマーヤとの団らんです。
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さてどうお仕置きをしようか、考えて、ハタと困った。ラーファには評議員の名前も何処に住んでいるのかも知らない。顔は分かったとしても、それだけでは薬師ギルドを見張って探し出さなければならない。
せめて名前だけでも知らなければお仕置きも出来ない。ならばと薬師ギルドへ昼食の後出かける事に決めた。
でも、お昼ご飯の時間が取れない、先ほどの騒ぎを見ていた群衆が、本物の魔術を見たからか押し寄せて来たのだ。次々にやって来る患者と言う名のお客様、店を畳む潮時を失ってしまった。
そもそもの狙いは魔女の治癒と薬を広く知らしめる事だったわけで、今の状況は歓迎すべき事なんだけど、
疲れ果てて、やっとお客様が少なくなり、閉店出来たのは既に昼12時(午後5時)を過ぎていた。お店を文字通り畳みながら、考えていたのは「行き帰りの一人の時に攫ってしまえば」と言う評議員らの言葉だ。
魔術師を無効化するには、ベロシニア子爵がした香辛料爆弾を思い出す。あの時は事前に矢除けの結界を張って防いだが、今回遠方の風上から流されて不意打ちされると反撃が難しい。
危機察知は20ヒロ(30m)までが範囲なので、特に家の密集している
思い余って中堀筋をいく事にした。そちらから帰れば危険な場所は中堀筋の中町を通り過ぎるまでで済みそうだ。
念の為矢除けの結界を周りに張りたいが、はた迷惑になるため諦めた。代わりに水中で体を保護するための
この魔術は身体に沿った範囲を覆う結界を作り、その中を守ることができる優れものの魔術だ。
水中では無く、フードをした魔女が町中を歩く分には十分香辛料爆弾を防いでくれる。マーヤが考案した風と光と水の3重魔術陣で構成された結界で、ラーファも最近覚えた。
主に水中の行動を考えて作成された物だ。これなら香辛料爆弾の様なはた迷惑な物を使われても、ラーファに被害は無い。欠点もあるのだが、水中での事なので陸上では問題が無い。
水中での欠点も浅い磯や川で使う分には問題無いが、深くなると魔力消費がとんでもなく多くなる。深い水の中で
幸い危機察知も働かず、下屋敷に帰り着く事が出来た。
明日の朝薬師ギルドへ行って、あの3人の議員に付いて聞いて来よう。名前だけでなく住所も、職業は薬師の魔女だと思うが確認しておきたい。
そうだ今日の公開治療が好評だったおかげで、魔女の薬が底をついてしまった。新しく作らないと公開治療が出来なくなる、マーヤも手伝ってくれるかな?
神域の家で待って居ると、マーヤが夕食を終えて帰って来た。
マーヤが一緒にお風呂に入ろうと言うのでそう言えば使節団が来てから朝食以外の時間ではすれ違ってばかりだった。8日ぶりにマーヤを洗ってあげよう。
マーヤを見ているとお風呂が好きなんだなぁ と湯船につかってへにゃれた顔をしているマーヤに見とれる。マーヤを膝に座らせ、仰向けにして髪を洗う。
マーヤも大きくなったし、髪も長くしているのでシャンプーで洗う前に温めのお湯を入れた桶に髪を付け洗いする。髪を付けている間、ラーファの組んだ膝の上で仰向けに収まっているマーヤに話しかける。
「マーヤ、学校は楽しい?」
「ええ、思いっきり体を動かせるし、学べるし、おしゃべりがいっぱい出来るから、大好き」
話の最初に体が動かせる事が来るとは、マーヤって意外と護身術が合うのかもね。
「ラーファの方も一仕事終わったし、王都だと人が多くてトラブルも多くて大変でしょう?」
確かにトラブルが向こうから大挙してやって来たけど、何とかする積りだよ。
「あのね、マーヤは決めたの、やっぱりカカリ村に残るわ」
マーヤがラーファの反応を心配そうに見ている。マーヤの言葉でラーファが傷つくかもと心配している様だ。
「そうなのね、マーヤの決心はラーファも応援する」
「朝も言ったけど、ラーファはマーヤの決めた事なら全力で応援するわ」
「マーヤにとって一つ一つの決断が成長する階段なのよ、応援しない方が可笑しいわ」
「そうなんだ、ありがとうラーファ」
マーヤをこうやって抱っこ出来るのは何時まで何だろう? マーヤは日々成長しているわ、名前も思い出せない夫に教えてあげたい。
シャンプーを手に塗り軽く泡立てる。マーヤの髪に泡立てたシャンプーで、手を櫛にして梳いて行く。頭から髪の先まで洗うとシャワーで濯ぐ。
一度髪をタオルで拭き、リンスする。新しいタオルで髪を巻、頭の上にお団子にして止める。
さて体を洗っていきましょうね。
私達エルフや妖精族は体内と髪や眉毛やまつげ以外は産毛しか生えない。まだ幼いマーヤは当然だが、大人のラーファでも見た目が全く同じなのは少し引け目を感じる。
先日、イガジャ邸でお風呂に入れられ、マッサージされた時も、侍女の皆さんが毛の処理をしなくて良いのはうらやましいと言っていた。ラーファはその時、秘所までじろじろ見られて、その言葉を気にする所では無かったけど。
その点マーヤはまだまだ気にする年齢じゃないから、洗っていてもニコニコしている。そういえばおばばから、マーヤが護身術授業の後、洗い場で上半身裸で体を拭いていたと報告が在った。
竜騎士城塞の坂から魔女学園へショートカットしたり、遅刻が多いとか報告は受けているが、上半身裸を咎めたアンナ先生に「男の子と同じだから大丈夫」と言ったそうだ。
マーヤのかわいらしい胸を見て、確かにこの年齢なら男女の差は無いだろうけど、胸をさらす行為に慣れるのはどうかと思う。マーヤに上半身裸事件を聞いても気にして無さそうで今更だと思う。
ラーファもマーヤにお乳を吸わせたから、少しは大きいと思うけど、イガジャ邸の女性の皆様方の様な大きさには到底届かない。ラーファのいや、エルフ族と妖精族の全ての女性の永遠の願望だ。
もっと乳房が大きくなりたい。あれだけ研究熱心なハイエルフのお歴々が胸を大きくする研究をしなかったのだろうか、それとも研究して諦めたのだろうか?
マーヤが体を洗い終わると風呂につかる、ラーファも体を洗うとお風呂の中でマーヤを抱っこする。
この時間が一番幸せを感じる時だと思う。
お風呂から上がって、マーヤは自室へ、その前に薬の件を頼む。
「マーヤ、魔女の薬だけど、今日大繁盛して少なくなったの、時間の在る時で良いから作ってくれる?」
「ふふ、それならもう作ってあるよ、ラーファが使節団と話し合っている間に沢山作ったから」
衣装の刺繍を仕上げていた時マーヤも手伝ってくれたけど、他にも薬迄作ってくれていたとは、働きすぎじゃ無ければ良いけど。
「まぁありがとう、今日これから錬金で少しでも作る積りだったの、ありがたいわ」
「まぁね、備えあればってやつね」
マーヤを抱きしめてキスをする。
助かったわ、マーヤが持って来てくれた薬の数と種類を数えて安心した。これほどあれば、今日のペースで消費しても20日分は十分ある。
毎日公開治療を開くわけでは無いので、一ヶ月は余裕で持つだろう。
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次回は、魔女が報復のために動き出します、先ずは情報収集から。
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