第20話 魔女の名は騒動の元(5)

 薬師ギルドの評議員へ物騒な事を考えるラーファ。

――――――――――――――――――――――――

 薬の供給不足が無くなったので、次は薬師ギルドの議員へお仕置きね。


 一番正当と言うか筋を通すなら、イガジャ侯爵家を通して王様から処罰して貰うのが良いけど。大事に成るのは当然だし、処罰が議員以外へも波及しそう。


 此の筋は無しね。


 次は薬師ギルドへ直接抗議する手が在るけど、破落戸ごろつきらを雇った証拠が無ければ逆に名誉棄損でこちらが処分される。


 最後と言うか最初っからこれしか考えてないけど、闇討ちね。彼らの住処を彼ら毎潰す、これのみ。


 明日薬師ギルドを訪ねて、議員の事を聞いて来ましょう。後で議員が痛い目を見たとしても、か弱い魔女に疑いが来ることは無いでしょう。疑われても、証拠が無ければ好いのよ、証拠が無ければね。


 高らかに笑ってやるわ。


 「おーほっほ、おーーほっほっ」


 まぁ痛い目に遭わせるだけですけどね、いくら相手が悪だとしても脅されたからと言って殺す事はありません。多少住処が壊れてもそれは建付けが悪かった性ですね。


 次の朝マーヤに行ってらっしゃいのキスをした後、神域を出て下屋敷から隣町の南町流東堀町へと行く。ここの大広場の一角に薬師ギルドの建物が在る。


 入り口から中へ入るとカウンター内にオイゲン様が居る。入って来たのがラーファだと分かったのか、椅子から立ち上がって此方へ近寄って来た。


 「カカリ村の魔女殿、今日はどのようなご用件でしょうか?」


 オイゲン様の対応が柔らかく成ってる? 薬の価格で誤解が解けたのも在って既に敵意は無くなっているようですね。


 「はい、前回ここで話し合いをした時列席されていた議員の方3名のお名前と住所を知りたいと思いまして」

 「それはまた、どういったご用件でお知りになりたいのでしょうか?」


 オイゲン様は今回の破落戸らの件は知らないと思いますが、日ごろ評議員との付き合いのある人です。全然知らないとは思えません。


 「実は昨日、治療をしていました所へ3人の男が難癖をつけて妨害に来ました」

 「なんと! それでお怪我は在りませんでしたか?」


 受け答えからは真摯にラーファを心配してくれている様に思います。


 「おかげさまで、私には何のケガも、治療用の備品にも被害は在りませんでした、ただ」

 「男らが申すには、私が偽の薬を売っていると薬師から・・・・聞いてやって来たと申しておりました」


 まぁ男らが偽薬だと言ったのは本当だから、少しぐらい付け足してもいいよね。


 「私が魔女の薬を治療に使ったり、売っている事は広く知れ渡っていますでしょうが、薬師から・・・・聞いたと申すからには、薬師とは私に疑念をお持ちの議員の方しか考え付きませんの」

 「そう言う訳で、彼らについて教えて貰おうとここへ来たわけです」


 ラーファがそう言うと、オイゲン様はラーファのおおよその意図を察したようです。警戒するような顔つきになっています。


 「そうでしたか、被害が無くて幸いでしたな。」

 「しかし、男がそう言ったと聞いただけではどこの薬師が言ったのか分かりません。」

 「ましてや、薬師ギルドの議員などと言いがかりではありませんか?」


 やはりオイゲン様は心当たりがありそうですね、心当たりが有ってもオイゲン様としてはラーファに協力して評議員の悪事を暴く手伝いはしたくないようです。この調子では会員名簿を見せてくれないでしょうね。


 「そうだと思いますわ、でも疑念がある事も確かです」

 「彼らは一度私へ疑いを掛け、ギルドへ召喚しています」

 「しかも、疑念が晴れても、謝罪一つせず退席しています」

 「疑うなと言っても、疑いたくなりますわ」


 切っ掛けに成った出来事ですから、オイゲン様も思い当たるふしがあると思います。


 「はい、魔女様のご懸念は理解します。」

 「でも、具体的な証拠が無ければ、議員の方々の情報をお教え出来ません。」


 やっぱりらちが明かないわね、それならそれでやりようはある。密かに使い魔を召喚する。オイゲン様の後ろの棚に、背表紙に大きく薬師ギルド会員名簿と金字で書かれた書籍が置かれています。これが会員名簿の写しになる管理用の名簿でしょう。


 「疑惑の件は私が調べます、そのためにも名前と住所が知りたいのです」


 使い魔に、会員名簿の置かれている棚を覚えさせる。会員名簿と書かれているので分かりやすい。ラーファが使い魔に盗み見させようとしているのを知らず、オイゲン様は頑なに名簿の開示を拒否するようです。


 「でも、会員と言えど他の会員の事を知らせるのははばかられます。」

 「ご期待に沿えません、申し訳ないですがお引き取りを。」


 ギルドの対応は予想の範疇です、


 「分かりました、今日はこれで引き上げますが、何か進展が在れば、又来ますね」


 会員名簿の場所は分かりました、この後、名簿を使い魔に写し取って貰いましょう。


――――――――――――――――――――――――

 次回は、いよいよお仕置き発動か。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る