第13話 (閑話)ベロシニア子爵Ⅱ(1)
プロローグで語られた闇魔術師との
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目まぐるしくオウミ国の中での北の大公殿下の立ち位置が変化している。
ロマナム国との戦争は北の大公家とほとんど関係なく進んでいる、これは由々しき事態だ。戦争にかかわる利権は戦争に関われば関わるほど深く食い込める。しかるに、北の大公家は国内で
飛竜の事件から
その代わり、王都のガランディス伯爵とは密に連絡を取り合い、領地問題など譲れるところは極力譲り王家に恩を売って、時間を稼ぎ情報を収集している。
何かしらの動きが在れば、起死回生のチャンスが訪れる事も期待できるだろう。少しでもその機会を作るべく情報の収集に
竜騎士隊が活躍して、ダンケル城塞か降伏しロマナム国の王都への道が開けた頃、ある存在が接触してきた。ロマナム国の闇精霊術師とか闇魔術師などとオウミ国で呼ばれる、イスラーファを拘束寸前迄追い詰めた存在がロマナム国を離れル・ボネン国へ移った事で、ル・ボネン国から密使がきたのだ。
密使はイスラーファとマーヤニラエルの情報をル・ボネン国へ知らせる事と引き換えに眷属の2名の闇精霊使いを貸し出すと提案してきた。この取引は旨く纏まり、私はイスラーファの事で知りえた事をル・ボネン国へ知らせた。
マーヤニラエルに付いては情報が集まらなかったが、ガランディス伯爵から魔女学園にいると知る事ができた。だがマーヤニラエルが魔女学園にいる以上のことが分からず、貸し出された闇精霊使いを使い調べさせた。
結果、手ひどい反撃を食らい、闇精霊使いは辛くも逃げ帰った。カカリ村へ闇精霊を行かせた途端、闇精霊は補足され逆に闇精霊との繋がりをたどられた。危うく居場所を見つけられるところをあわてて接続を切って逃れた。
カカリ村は魔女の縄張りだと思い知った事件だ。
次の手段として闇精霊使いから、洗脳するのはどうだ? と提案された。洗脳は弱い洗脳と長く続く洗脳の2種類があり、一時イスラーファに手錠を嵌める事に成功した実績がある。
洗脳する相手として、魔女の薬の卸問屋オズボーン商会をあげてきた。商会は魔女の薬を一手に握るオウミ国だけでなく周辺国へも強い影響力の在る商会として有名だ。商会長のオズボーンを洗脳出来れば、マーヤニラエルを探すだけでなく魔女の薬の利権を握るまたと無い機会になるに違いない。
オズボーン商会の使用人を弱い洗脳で味方に引き入れ、商会長を
逆襲で隠れ家を襲撃され、顔を知られた闇精霊使いらは、始祖の闇魔術師の元へと逃げた。弱い洗脳の使用人も見つけられたようだ。
私の事は露見していないが、疑われている事はガランディス伯爵から知らされた。うかつな行動が出来なくなったので、情報提供をしながら様子を伺っていた。
そんな時だ、ロマナム国の支援に西のネーコネン一族の国々が、神聖同盟を立ち上げた。神聖同盟の盟主としてロマナム国のゼフュロス王が
その神聖同盟から宣戦布告の前に警告として文書がオウミ国へ届いた。その中にマーヤニラエルを名指しで希望の神子と書いて在る箇所があり、情報の漏洩先が王宮からでは無いかと疑われているとガランディス伯爵から連絡が在った。
実際漏洩したのはガランディス伯爵から私、そしてル・ボネン国へ伝わったのは間違いではない。どうして神聖同盟がその名を知ったのかはル・ボネン国の問題だろう。
だが、待ちに待った動きが出て来た。神聖同盟から熱烈に求められたイスラーファはオウミ国から逃げ出す決意をした。
ガランディス伯爵からの情報では詳しくは分からないが、ビチェンパスト国へ行くらしい。イスラーファ出国の情報を得たル・ボネン国が、自国への招待を熱心に働きかけてきた。
ル・ボネン国が使節団を送るそうだが、私の予想では断ると思っていた。だが、真逆のル・ボネン国訪問がイスラーファの方から在ったと言うのだ。これは動く切っ掛けになるかもしれない。
どう動くか思案中の私の前に再び、闇魔術師の眷属の二人が現れた。イスラーファの出国についての情報を知りたいそうだ。
彼らはル・ボネン国でイスラーファを手に入れる算段をしている様だが、私はイスラーファがビチェンパスト国へ行く事を知っている。ル・ボネン国へ行くのはあくまで神聖同盟への
彼らが知らなくて、私だけが知っているイスラーファの情報、苦い思いをしたあの離れ岩での光景を今でも鮮明に思い出す。イスラーファは飛竜に頼らなくても、空を飛ぶ魔道具を持っているのだ。
ル・ボネン国へ着いたその夜にでも、空飛ぶ魔道具でオウミ国へ帰ってくるつもりだろう。今は彼らが失敗するのを見守るだけだ、失敗した時こそ彼らと取引する絶好の機会だろう。
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マーヤの事が神聖同盟に知られたのは、ベロシニア子爵が情報漏洩の原因だった件。
ベロシニア子爵の表に出ない密かな動きの話でした。
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