第31章 戦場
第137話 戦闘開始
それから10分程度、山道に入った頃から。
周囲の景色が荒れ始めた。所々の森の木々が折れ曲がり、路傍の岩が砕けている。街道の石畳が所々崩れている。
更には魔獣や魔物が倒れたりもしている。ゴブリンあたりから魔猪、更にはファメースやオーガといった大物まで。
辺りに鉄の香り、血の臭いだ。魔獣か魔物か、それとも人のか。わからないまま先を急ぐ。
まだ人間の死体は見ていない。見えていないだけかもしれないが。
「短絡路を飛ばします」
荷車が通れる道は緩くて長い。なので歩行者用に急坂だが短い道が設けてある。
そこを俺達は走り抜ける。流石に速度は落ちた。この状態の道では時速三〇〇キロをこえるような速度は出せない。
半ば飛び上がるように上っても時速六〇キロ程度が限度。それ以上は岩場混じりの急坂でカーブが多いこの道では無理だ。
側方、馬車道の方に多数の
「合同第二
「負傷者をまとめておいていったようでごわす。主力はこの先にいる
ナリマとシュウヘの会話が横で聞こえる。これくらいの速度なら会話が可能だ。
「合同第二
ミーツ氏による解説。ビルダー帝国の第三
そう思って気づいた。なら第三
この先10kmに大量の
こちらから見て一番遠い北東部分では激しい戦いが続いているようだ。
「もう少し先で高原部分に入る。馬車道と合流した後は一本道だ」
「戦場のど真ん中を突っ切ります。各自障害と感じた敵は適宜倒して下さい。ただし速度は今のまま維持します」
時速60kmで走りながら前方の敵を倒して進めか。結構無茶を言われている気がする。しかし急がねばならないのは確かだ。
確かに最精鋭部隊だろうとはわかる。
しかし間違いなく疲労しきっている。戦闘不能状態の
それでもまだ戦える
しかし
「道を切り開いてくるでござる」
「僕も行く」
シュウヘとナリマが加速する。高原状の場所までほぼ登り切った。まもなく馬車道と合流し道もまっすぐかつ平坦になる。
「俺達も行くか」
「シュウヘ達の後ろにつけましょう。交互に戦う方が効率がいいです」
「そうだな」
俺とサダハルもシュウヘ達の後を追う。
加速したおかげで前線が一気に近づいた。もう目視でもわかる。
敵は下級から中級の
それでも
「リーマとトールの間を抜くでごわす。二人ともこっちに気づいているから問題無いでござる。
ナリマ、間が開いたら一発大きいのをお願いするでござるよ。後は拙者が連続張り手で道を空けるでごわす。それでも開かない分のフォローは適宜頼むでござる」
「わかった」
名前が出た、という事はシュウヘやナリマの知り合いなのだろうか。先頭で戦っている
ただそれを聞く余裕は無さそうだ。先頭ほぼど真ん中で戦っている
その瞬間にナリマが遠距離攻撃を放った。ほぼまっすぐに飛ぶ、かなり強力な
ただの張り手ではない。一手一手が遠距離攻撃を放っている。俺のエアバレット連射以上の早さと速さだ。
魔物が倒れる、そこまで行かなくても大体はルート上から弾かれる。それでも残る敵は張り手で直接弾く。
俺もエアバレットを連射して左方向から魔物がルート上に出るのを防ぐ。右側からの敵はサダハルが
それでも一分程度で速度が遅くなってきた。中級
本来ならその分、俺やサダハルが援護の遠距離攻撃で片付けるべきところだろう。しかし実際には左右からやってくる敵がいる。そちらへの対処で前方への援護はどうしても充分に行き届かない。
このままだとじり貧だ。そう思ったところでナリマの声が聞こえた。
「大きいので道を開けます」
「了解でごわす」
シュウヘがすっと左にずれる。その空間に姿を現したナリマが入り込んだ。
強力な遠距離攻撃。先程のとは違いやや拡散する起動で敵
「凶悪ですね、この遠距離攻撃」
「
ただこの威力、我の知っていた頃のものとは桁違いになっているでござる」
走りながらシュウヘが解説。
なるほど、シュウヘのどの技より強力となると、それだけでもはや化物レベル。更にそれが桁違いになっていると……
ビルダー帝国なら間違いなく上級
それを数体まとめて一掃し、更に多数の敵にそれなりの被害を及ぼす凶悪な威力の攻撃。
これがナリマのとっておきという訳か。
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